普及が進む電子お薬手帳のメリット・デメリット
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患者のみなさんが使用している薬の情報を記録した、お薬手帳の電子化が進んでいます。最近では、さまざまな企業から「電子お薬手帳」が発売され、使用する人も増えてきました。まだ、紙のお薬手帳を使用している人が多いとはいえ、今後のさらなる普及に備えてシステムをよく理解しておくことが必要です。
ここでは、電子お薬手帳の基本的な機能やメリット・デメリットのほか、今後どのように変化していくのかをご説明します。
電子お薬手帳とは?
処方されている薬、服用歴、既往症、アレルギーなどの情報を記載したお薬手帳。その電子化が進んだきっかけは、2011年の東日本大震災でした。
多くの被災者は、普段使用している紙のお薬手帳を失い、避難所では医療情報を提示することが難しい状況でした。しかし、携帯電話は所有している人が多かったことから、スマートフォンで管理できる、電子お薬手帳の開発が進んだのです。
なお、2016年の診療報酬改定によって、電子お薬手帳についても算定上、紙のお薬手帳と同様に取り扱われることになり、利用拡大が一気に促進されました。
電子お薬手帳は、薬に関する情報や服用履歴をスマートフォンなどで記録・管理することができます。
スマートフォンにアプリをインストールすればすぐに利用でき、調剤明細書に記載されたQRコードを読み取ることで、処方された薬の情報が自動的に登録されます。なお、手動入力も可能です。
現在、多くの企業が電子お薬手帳のアプリをリリースしていますが、日本薬剤師会が提供する電子お薬手帳相互閲覧サービス「e薬Link(イークスリンク)」に対応したアプリであれば、異なる電子お薬手帳の情報も相互閲覧することができます。
電子お薬手帳のメリット・デメリットとは?
さまざまな機能が搭載された電子お薬手帳には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
具体的には、以下のような点が挙げられます(アプリによって機能は一部異なります)。
電子お薬手帳のメリット
・持ち忘れを防止できる
毎日必ず持ち歩くであろうスマートフォンで管理できるため、持ち忘れを防ぐことができます。旅先や出張先で病気になったときや、普段通っているところではない医療機関に行ったときにも、服用中の薬の情報を正確に伝えることができます。
・情報の記録が手軽
薬の情報をQRコードで読み取るだけで、自動的に記録することができます。現在使用している薬はもちろん、過去に処方された薬の情報も記録できますので、いつでも薬に関する情報を容易に確認できます。多くの薬を処方されている人、飲み合わせが心配な薬を飲んでいる人は、管理がしやすく便利です。
・家族全員の情報が共有できる
電子お薬手帳では、家族全員のお薬情報を共有・確認することができます。子供を急に病院に連れていかなければならない場合や、遠方で離れた両親の薬の管理、付き添いの際にも役立ちます。
・スマートフォンの紛失・故障時にも安心
薬の情報は、自動的にサーバーに保管(※)されるため、スマートフォンの紛失や故障などにより機種変更をした場合でも、同じデータを閲覧することができます。
※保管するには対応アプリにて「データ同期機能」の設定が必要です。
・便利な機能が搭載されている
電子お薬手帳には、電子版ならではの便利な機能が搭載されています。
薬の名前、服用時間、1回の服用量を入力することで服用時間にアラーム通知される「アラーム機能」は、飲み忘れの防止に役立ちます。また、カメラで撮影した処方箋を事前に薬局に送信できる「処方箋画像送信機能」を利用すれば、薬局での待ち時間を軽減することが可能です。
ほかにも、病院や薬局の通院履歴が記録できる「カレンダー機能」や、体重・血圧などを記録することで日々の健康管理に役立つ「健康記録」といった機能を備えているアプリもあります。
電子お薬手帳のデメリット
・高齢者には不便
スマートフォンを持っていない、あるいは操作に慣れていない高齢者にとって、電子お薬手帳は取り扱いにくいのが難点です。
パスワードが不明、操作方法がわからないといった場合、薬剤師が対応しなくてはならないこともあるでしょう。
・セキュリティ面の不安
お薬手帳に記載されている事項は、重要な個人情報です。データの扱いにはセキュリティの確保が強く求められますが現状、リスクの管理において、電子お薬手帳には不安があるという声もあります。
・電子お薬手帳によって仕様が異なる
現状では、アプリによって電子お薬手帳の仕様が異なり、機能にばらつきがあります。
操作方法の違いもあり、対応に手間取ることもあるようです。また、飲み合わせの確認などには、スマートフォンの画面を見せなくてはならない場合もあります。
電子お薬手帳の今後
現状、電子お薬手帳にはまだ課題があり、紙のお薬手帳と併用して使われる状況がしばらく続くといわれていますが、国は普及を推進しています。
なお、2017年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2017」においては、下記のような方針が示されています。
「患者本位の医薬分業の実現に向け、かかりつけ薬剤師・薬局が地域における多職種・関係機関と連携しつつ、服薬情報の一元的・継続的な把握等、その機能を果たすことを推進する。そのための方策の一つとしてICTによる情報共有(あらゆる薬局で活用可能な電子版お薬手帳等)を推進する」
電子化の価値を患者に伝えることが大切
電子お薬手帳の普及がますます進む状況の中で、薬剤師の立場から電子化の価値を患者目線で考えて、提案していくことも課題のひとつとなるでしょう。
特に、お薬手帳を利用する機会の多い高齢者や、複数の薬を服用する患者、副作用や飲み合わせが不安な薬を使用する患者のみなさんには、電子お薬手帳は大きく役立ちます。折を見て紙のお薬手帳を使用している患者のみなさんには、電子お薬手帳の利便性や使い方を伝えていくことも、薬剤師にとって必要になってくるでしょう。
例えば、高齢者の方であれば、利便性を伝えた上でICカードタイプの電子お薬手帳を検討してもらう方法もあります。スマートフォンが苦手でも、交通マネーと同様のイメージで使うことができますので、苦手意識を払拭して利用してもらえる可能性もあります。
いつでも必要な説明ができるように情報収集を
紙のお薬手帳にはない、さまざまな機能を持つ電子お薬手帳。今後、各企業からもより進化した電子お薬手帳が開発されることが見込まれています。
薬剤師サイドにとっても、患者のみなさんに聞き取りをすることなく、服用状況を確認できるなどのメリットがあります。患者のみなさんが安心して、電子お薬手帳を利用することができるように、日頃から情報収集をして、いつでも必要な説明ができるようにしておくことが大切です。
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