薬薬連携の具体的な業務と現時点での課題
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「薬薬連携」とは、病院薬剤師と薬局に勤務する薬剤師が連携して患者さんの薬物療法を支える取り組みです。在宅医療や外来通院治療の方が増えるにつれて、薬薬連携のニーズが高まると考えられます。具体的にどのように実践していくかや、現時点で明らかになっている課題などを解説します。
薬薬連携とは
「薬薬連携」とは、病院薬剤師と街の薬局に勤務する薬剤師とが、患者さんの薬に関する情報(入院前から服用していた薬剤、アレルギー情報、入院中に追加・変更となった薬剤、一般用医薬品、健康食品、薬の服用状況など)を共有することで、入院中・退院後を問わず、安全に薬物療法が行われるようサポートする取り組みです。
薬剤師は、安全に薬物療法が行われるよう、患者さんへの服薬指導だけでなく、薬歴や副作用、アレルギー症状の有無などを記録しています。入院中は病院薬剤師が、退院後は薬局薬剤師が患者さんの正確な薬歴を共有することで、予期せぬ副作用が生じるのを防ぐことが目的です。
薬薬連携で実施すること
服薬管理情報の共有
患者さんの了承を得て薬薬連携を行う場合、病院薬剤師と薬局薬剤師は「お薬手帳」と「薬剤適正使用のための施設間情報連絡書(施設間情報連絡書)」で情報共有します。
「お薬手帳」には、調剤の記録や副作用・アレルギー歴、主な既往症、過去に使用していた一般用医薬品や健康食品、アレルギーなどの情報が記録されています。
ただ、「お薬手帳」は紙面が小さいため、たとえば患者さんの服薬状況や特殊な調剤がなされている場合など、詳細を書き込むのが難しい場合があります。このようなときに活用するのが「施設間情報連絡書」です。
疑義照会
疑義照会とは、薬剤師法第24条で定められている薬剤師の義務です。
薬剤師法第24条(処方せん中の疑義)
「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」
疑義照会は、処方箋の記載内容の確認や調剤上の変更といった形式的な確認だけでなく、患者さんの個々の病状や検査値を考慮した上での実質的な確認の意味合いも含まれます。なお、条文では「医師への問い合わせ」とありますが、病院の薬剤部などが窓口となっていることもあります。
薬薬連携の事例紹介
ここでは、薬薬連携の具体例をご紹介します。
服薬管理情報の共有事例
箕面市薬剤師会では、退院後も安全に薬物療法を提供できるよう、患者さんが希望する地域の薬局宛てに「薬剤管理情報提供書」を作成し、その後の調剤や薬剤管理などに役立ててもらう取り組みが行われています。
「薬剤管理情報提供書」には、入院のきっかけとなった病名や治療経過、退院時処方、検査値、服薬管理に関する情報(誰が薬を管理しているか、薬でのアレルギー歴の有無、服用・使用にあたって介助が必要かどうか、薬局薬剤師への依頼事項など)、日常生活面のことや他の連携先(クリニック、各種介護サービスなど)の連絡先などが記載されています。提供書は病院にて記載後、薬局にFAXで共有されます。
疑義照会の簡素化事例
病院の中には、疑義照会の中でも形式的な内容のもの(同一成分の医薬品の種類変更、剤形変更、薬の一包化など)について「疑義照会簡素化プロトコル」として取りまとめているところもあります。
薬剤師による疑義照会は、医薬品を適正に使用する上で欠かせない、法的にみても極めて重要な職務です。ただ、現時点では患者さんの状況を考慮した実質的な疑義照会より、剤形の変更といった形式面での疑義照会のほうが多く、このことが医師や病院薬剤師の負担を増やしていることが課題となっていました。
そこで「疑義照会簡素化プロトコル」を作成し、形式面での疑義照会を減らすことで、医師などの負担軽減と患者さんのケアの充実を図ることを目指します。
薬薬連携のメリット
薬薬連携を行うメリットとして、まず入院する患者さんの持参薬を病院薬剤師がしっかりチェックできることが挙げられます。たとえば、持参薬の中によく似た成分の薬が複数あった場合、薬局薬剤師に確認したら、そのうちの一つはしばらく前に服用をやめていたものだったことが判明した、といった重要な情報を得ることができます。
また、薬局薬剤師は入院時の状況や病院で受けた治療内容を把握できるため、患者さんの状況に合った服薬指導や、治療で使う薬との相互作用をチェックすることができます。そして、もし患者さんの状況に異変がみられた場合、薬局から病院へ連絡することで、主治医にその情報が伝わって今後の治療に役立てることもできます。病院薬剤師と薬局薬剤師とが連携することで、患者さんの健康を守る一助となるのです。
薬薬連携の実践から見えてきた課題
このように、薬薬連携は患者さんの健康を守る上で重要な役割を担っていますが、実践を通して見えてきた課題もあります。
たとえば、入院時の持参薬を確認する際に、お薬手帳などの情報が最新ではなかったり、用法・用量や規格が不明瞭で参考にしづらい、という課題があります。
また、病院薬剤師から提供される情報が少ないと、患者さんへの説明で食い違いが起こる可能性がある、といった意見もみられます。そのほか、「施設間情報連絡書」の作成にかかる負担を軽減したり、情報共有の方法を見直したりする必要がある、といった意見も寄せられています。
今後、在宅医療が広がるにつれて、薬薬連携の取り組みはますます重要になると考えられます。こうした意見を踏まえて運用を変えていくことにより、病院と街の薬局とが連携して患者さんの健康管理を担うことが期待されます。
「薬薬連携」は、患者さんに安全な医療を提供する上で重要な役割を担います
薬薬連携は、病院薬剤師と薬局薬剤師が情報共有しながら、患者さんの健康管理を行うことで、症状の変化にすばやく対応できたり、予期せぬ副作用を防いだりする効果が期待できます。提供する情報の内容や共有の方法などに課題はあるものの、今後改善することで乗り越えていけると思います。今後、在宅医療を選択する方が増えるにつれて、薬薬連携は安全かつ適正な医療を進めるうえで重要な役割を担うと考えられます。
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