あ行上乗せ試験(うわのせしけん)
上乗せ試験とは
上乗せ試験とは、臨床試験(治験)を行う際、被験者を2群に分け、両群に標準治療を行いながら、1群には治験薬を、もう1群にはプラセボ(偽薬)を追加して評価を行う方法です。別名「アドオン試験」とも呼ばれます。
上乗せ試験は「病態に有効な標準治療薬がある場合、プラセボ対照群の被験者は標準治療を受けることができない」という倫理的な問題を避けるために行われます。特に標準治療によって死亡、あるいは回復不能の障害といった重要な障害を避けうることが知られている場合、プラセボ対照群の被験者は治験を受け入れない可能性が考えられるからです。
標準治療が十分ではない場合に有効な上乗せ試験
上乗せ試験には、標準治療が十分有効とはいえない場合、治験が単なる非劣勢試験であるだけにとどまらず、臨床的な結果の改善の証拠が得られるというメリットがあります。抗腫瘍剤、抗てんかん薬、抗心不全薬の試験で上乗せ試験が多く行われる傾向があります。ただし、新治療が標準治療とは異なる作用機序を持つ場合に限って有効であるという考え方もあります。
ヘルシンキ宣言について
日本の臨床試験は、ヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則)を基盤として実施されています。ヘルシンキ宣言においては、以下のような点が臨床試験の原則とされています。
・科学的・倫理的に適正な配慮を記載した試験実施計画書を作成すること
・治験審査委員会で試験計画の科学的・倫理的な適正さが承認されること
・被験者に、事前に説明文書を用いて試験計画について十分に説明し、治験への参加について自由意思による同意を文書で得ること
上乗せ試験の倫理性
ヘルシンキ宣言での同意事項を臨床試験に導入する際のためのガイドラインが、いわゆるICH-E10ガイドライン「臨床試験における対照群の選択とそれに関連する諸問題」について(平成13年2月27日付医薬審発第136号審査管理課長通知)です。E10ガイドラインにおいても「プラセボ対照試験においては、一般的な標準治療に、新しい治療又はプラセボがそれぞれ上乗せされる」という記述がみられます。
また上乗せ試験の倫理性について、「プラセボ又は無治療対照の使用が、患者が治療を全く受けないことを意味するわけではないことは強調されるべきである。例えば、承認された治療薬が存在しない腫瘍領域の試験では、プラセボ又は無治療群の患者も、被験薬群の患者も共に、必要な緩和療法(例:鎮痛薬)及び最良のサポーティブ・ケアを受けることになろう。多くのプラセボ対照試験は『上乗せ試験』として実施される。この場合、全ての患者が、特定の標準治療又は治療に当たる医師・施設に任せられた治療を受けることになる」と記述しています。
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