か行経皮吸収型製剤(けいひきゅうしゅうがたせいざい)
肌に貼るだけの手軽な医薬品
経皮吸収型製剤は、肌に密着させて使う医薬品の総称です。これだけでは、湿布薬や麻酔シートなどの貼付剤、いわゆる「貼り薬」と同じように思えますが、明確な違いがあります。
貼付剤は、特定の部位にのみ薬効を表すものです。捻挫や筋肉痛を起こした部位に貼ることで痛みを取る湿布薬や、小さな手術の局所麻酔に用いる麻酔テープなどは、貼った部位にのみその効果を発揮します。
ですが、経皮吸収型製剤は、それを貼った部位から皮膚を通して有効成分が浸透し、さらに血管内にまで入り込み、血流に乗って全身へ作用します。
つまり注射や点滴、さらには飲み薬と同じように、血液中に薬剤を放出することで、全身への薬効を期待するのが、経皮型吸収製剤なのです。
メリットの多い経皮吸収型薬剤
経皮吸収型薬剤には、いくつかの特徴があります。
まず、誰でも簡単に扱えるということです。注射や点滴のように病院に出向く必要はありませんので、通院に時間を取られることもありません。肩こりや腰痛のときに使うプラスター剤と同様、薬剤を含んだシートを肌に貼るだけですから、誰でも自宅で使うことができ、しかも行動を束縛されることがないのです。
薬剤をゆっくり浸透させていくため、有効成分の血中濃度を長時間にわたって一定に保つことができます。さらに、肝臓での「初回通過効果」を避けることができます。飲み薬の場合、腸で吸収された薬効成分は血流に乗ってまず肝臓に送られます。すると、肝臓の酵素によって薬物が代謝され、薬効が落ちる可能性があるのです。これが初回通過効果ですが、経皮吸収型薬剤では肝臓を通らずに全身血に取り込まれますので、薬効が落ちる心配がありません。
また、経口投与が難しい患者さんに対しても容易に使えるという点も、大きなメリットです。
使用上の注意点
このように、経皮吸収型製剤はさまざまなメリットを持っています。ですが、皮膚を通過できる成分は限られているため、すべての医薬品を経皮吸収型にするわけにはいきません。
現在よく用いられているものは、「狭心症治療薬」や「喘息治療薬」「ホルモン製剤」「麻薬鎮痛剤」などが挙げられます。また、禁煙外来で使われる禁煙補助剤、いわゆる「ニコチンパッチ」も経皮吸収型製剤の一種です。
手軽に使える医薬品ではありますが、使用にあたっては注意すべき点もあります。
経皮吸収型製剤を貼る範囲は、ある程度決められていますが、その範囲内で貼る場所を変えていく必要があります。皮膚への刺激性があるため、同じ場所に貼り続けていると、皮膚を傷めることがあるからです。また、シワができないよう、皮膚にぴったり密着させて貼らないと、十分な効果が得られません。
手軽に使える医薬品であるだけに、こうした点を患者さんにしっかり説明することが肝要です。