去痰薬とは

去痰（きょたん）薬とは、痰（たん）をはき出すのを容易にする薬剤です。気道粘液の分泌を促して痰を薄めるのと併せて、気管支粘膜面を粘滑にすることで痰を排出しやすくするものや、痰を溶解することで流動性を与えるものなどがあります。気道分泌促進剤としてあげられるものはヨード塩、ブロムヘキシンなどとなり、気道粘液溶解剤としてあげられるのが、システイン製剤や酵素製剤です。

去痰薬として用いられてきた薬剤にはさまざまなものがあり、種類も多くありますが、それらの臨床上の効果や作用機序は明確であるとはいえません。
ちなみに、健康な人の場合でも、気道内では毎日100ミリリットル程度の分泌物が作られているとされています。

痰のメカニズム

意外に思われますが、痰の主成分の90％は水分とされています。その中に加えてムチンという糖たんぱく質も含まれています。このムチンは粘り気のある物質であり、増加するとドロドロの状態となり、分泌物が固まりやすくなることで痰を生成してしまいます。

では、なぜムチンは増えてしまうのでしょうか。その原因が気道の炎症です。気道が炎症を起こすとムチンが過剰に発生してしまうのです。そして、気道が炎症を起こすのは、かぜを引いた時や、喘息や肺炎などの時ですつまり、それらの病状が出た際に痰が増えるというメカニズムになります。元来、痰は体内に侵入してきた不必要な異物を取り除くために生成されるものです。

つまり、痰自体は有害な物質ではないのですが、粘りが増して排出が難しくなる（気道に痰がたまってしまう）と、呼吸困難などを引き起こす可能性があります。また、気道に痰を長い間ため続けてしまうと、それが要因となり、感染症のリスクも高めることになります。そこで去痰薬が必要とされるのです。

痰の粘りにより使い分ける

前項でも少々述べましたが、去痰薬にはさまざまな種類があります。「気道分泌促進剤」「気道粘液修復剤」「気道粘液溶解剤」「気道潤滑剤」などです。

まず、気道分泌促進剤ですが、これは気道の分泌液生成を促し、痰を薄めることで粘着作用を弱体化する薬剤です。主なものとしてあげられるのが、ビソルボンやプロチンです。

次に気道粘液修復剤です。これは、気道における異常な分泌を修復し、粘液の比率を正常化させることでムチンの増加を抑え、痰を排出しやすい状態にする薬剤です。主なものとして、ムコダインがあげられます。
気道粘液溶解剤は、チスタニンやペクタイトに代表されるのがシステイン系の薬剤です。痰の主成分であるムチンの糖とタンパク質を分断・分解することで痰を出しやすくする薬です。
また、肺表面活性物質の分泌を増やし、気道粘膜の潤滑作用をスムーズにすることで、気道に痰を付きにくくする薬剤が気道潤滑剤です。代表的なものとしては、ムコソルバンがあげられます。

これらの去痰薬は、個々に痰の量や粘度が異なることによって、その使い方が異なります。「痰は少ないが、粘り気が強い」といった場合には、気道分泌促進剤と気道潤滑剤の併用が推奨されます。
一方、その逆で「痰の量は多いが、粘り気は、それほどでもない」といった場合には、気道粘液修復剤が用いられます。また、痰が詰まりがちな時には、気道潤滑剤と併用することが推奨されています。

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