か行局所麻酔薬(きょくしょますいやく)
局所麻酔薬とは
局所麻酔薬とは、意識や反射機能は正常な状態を維持したままで、目的とする局所のみの知覚を鈍麻または消失させて、疼痛(とうつう)を軽減させる薬物のことをいいます。
主に局所的な手術の際に、疼痛を軽減または消失させるために利用されます。使用する場合には、表面麻酔や浸潤麻酔、硬膜外麻酔、脊髄麻酔などの方法が用いられます。
こうした局所麻酔薬は、外傷による疼痛を緩和するために、古くから経験的に使用されてきました。例えば、ペルーのインディオは、2000年もの昔からコカの葉をお茶の代わりにして飲むなど、嗜好(しこう)品として用いてきました。
その一方で、コカの葉を外傷に用いると痛みが緩和されるということを知っていたようです。そして、そのコカの葉の成分であるコカインは、現在でも代表的な局所麻酔薬として用いられています。
全身麻酔との比較
全身麻酔と局所麻酔とはさまざまな点で異なります。全身麻酔の作用が中枢神経系でのシナプス伝達抑制として働くのに対して、局所麻酔の作用はNaチャネルブロッカーによる神経伝導を抑制します。そのため、全身麻酔が意識を消失させるのに対して、局所麻酔をした場合には意識はあります。
また、全身麻酔は鎮痛作用に関してさまざまなケースがありますが、局所麻酔には、当該箇所に明白な鎮痛作用があるという点で異なっています。反射については、全身麻酔が全身を抑制するのに対して、局所麻酔は局所を抑制します。また、筋弛緩(しかん)についても、全身麻酔は全身の骨格筋を対象としていていますが、局所麻酔は局所の筋弛緩になります。投与方法については、全身麻酔では吸入や静注、筋注、座薬、中枢、注射、穿刺すなどの方法が用いられますが、局所麻酔の場合では皮下注、筋注、硬膜外などで投与をします。
メリットとデメリット
局所麻酔にはメリットとデメリットがあります。
まず、メリットとしては、「意識が保たれていること」「胃充満患者や腹臥(ふくが)位での手術に対応可能なこと」があげられます。また、心肺機能や全身におよぼす影響が少ないということもメリットで、合併症の種類も少ないといえます。
一方、デメリットとしては、この方法の場合では、「麻酔の持続時間に制約があること」や、「無痛効果が不確実な場合があること」、また「手術する範囲が広い場合に大量の麻酔薬が必要となるために、麻酔薬中毒が起こりやすくなること」などがあげられます。