さ行制吐薬(せいとやく)
吐き気・嘔吐を抑える薬
吐き気や嘔吐はさまざまな原因で起こるため、その原因を突きとめて治療にあたるべきです。ですが誰でも経験があるように吐き気や嘔吐はそれ自体が苦しいものですし、しかも嘔吐が続けば大幅に体力を消耗します。根本的な治療が重要なのはもちろんですが、あまりに症状が激しい場合には、対症療法として制吐薬を使用するのも患者さんにとって有益なことです。
制吐薬はその作用によっていくつかの種類があり、症状の原因に合わせて使い分けられています。主に使用される制吐薬としては、次のようなものがあります。
・5-HT3受容体拮抗薬
・NK1受容体拮抗薬
・ドパミン受容体拮抗薬
・抗ヒスタミン薬
このうち、ドパミン受容体拮抗薬は制吐薬として広く使われており、乗り物酔いによる吐き気などには抗ヒスタミン薬が用いられます。
吐き気や嘔吐を起こす原因は
吐き気や嘔吐を催す原因は、数多くあります。おもなものを挙げてみましょう。
食べ過ぎ・飲み過ぎ、ストレス、乗り物酔い、悪臭や煙、食中毒、妊娠、薬の副作用、特定の疾病によるもの
食べ過ぎや飲み過ぎは注意していれば防げるものですが、ストレスとなると本人の意志だけで改善するのはなかなか難しいことです。また乗り物酔いや悪臭・煙が原因となる場合も、外部からの刺激に敏感に反応する体質的な問題でもありますから、制吐薬をうまく使って症状を抑えることは有効でしょう。
しかし、食中毒など何らかの疾病による吐き気・嘔吐の場合には、制吐薬で症状を抑えるだけでなく、根本的な原因を探ることが重要になります。さらに症状として吐き気や嘔吐を起こさせる疾病も数多くありますし、命に関わるような重大な疾病もあります。ですから原因がはっきりしない吐き気や嘔吐は、まず医師の診察を受け、原因をつきとめた上で最適な薬を服用するべきです。
がん治療における制吐薬
吐き気・嘔吐の原因として「薬の副作用」が挙げられていますが、代表的なものとしては抗がん剤があります。抗がん剤の多くは吐き気・嘔吐の副作用を持っており、中には制吐剤を併用しなければ服用を続けられないほど、副作用が強く現れる薬もあります。
そのため抗がん剤治療では副作用の発現を前提に、「吐き気をどのようにコントロールしていくか」という観点が重視されています。抗がん剤治療における制吐薬使用についてはすでにガイドラインが設けられており、「吐き気のコントロール」の重要性は今後も大きくなっていくといえるでしょう。
抗がん剤治療で使われる制吐剤は、先に挙げた数種類の制吐薬のほか、ステロイド剤や抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬などが単独で、あるいは複数を組み合わせて使われることもあります。医薬品の専門家としての薬剤師の手腕が期待されるところです。