さ行止瀉薬(ししゃやく)
止瀉薬の分類
止瀉薬とは、いわゆる下痢止めのことです。単に下痢止めといってもその種類はいろいろで、以下のように大きく分類することができます。
・腸管運動抑制薬...腸のぜん動を抑えることで腸管内への水分の分泌を止め、逆に吸収を促す
・吸着薬...細菌性の毒素や水分を吸着させて下痢を抑える
・収れん薬...腸の粘膜を守り、炎症を抑える
・殺菌剤...腸内の殺菌を行い、腐敗の進行を抑える
・整腸剤...腸内の細菌のバランスを整える
下痢になる原因はさまざまです。冷えやストレスによる急性のもの、細菌やウイルスの侵入によるもの、毒素ではないものの肉や天ぷらなどの脂っこい料理を食べ過ぎてしまう、暴飲暴食などで食べたものを消化しきれない、糖尿病など他の病気によるもの、など。実に多くの原因によって下痢という症状が起こるため、それらに合わせた止瀉薬が作られています。
下痢の原因と止瀉薬の種類
止瀉薬として病院で処方される医薬品としては、ロペラミドがよく知られています。これは前項の腸管運動抑制薬にあたり、ストレス性の下痢には効果的で、止瀉薬の中でも最も強い効き目を発揮しますが、あらゆる下痢に適応するものではありません。
前項で書いたように下痢の原因はさまざまなため、止瀉薬を服用するときにはその原因に合わせて適したものを選ぶ必要があります。
風邪や食中毒などの、ウイルスによる下痢の場合には、下痢によってウイルスを体外へ排出する必要があります。このような場合に前述のロペラミドを用いると、かえって病状を悪化させる可能性もありますから、十分注意が必要です。
身近な薬だからこそ注意が必要
通常、突発性の下痢だけで慌てて病院に行く、という人はまずいないでしょう。ほとんどは何度かトイレに駆け込んで症状が自然に落ち着くのを待つか、あるいは市販薬で間に合わせるかするものです。
一般の患者さんにとって、下痢止めは頭痛薬やかぜ薬と同様、とてもなじみ深い薬品です。しかしその半面、下痢止めにこのような分類があることや、下痢の原因や用途に応じて飲み分ける必要があることなどは、ほとんど知られていないものと思われます。
というわけで、市販の止瀉薬にもさまざまな種類があり、下痢の原因に合わせて使い分けることが必要です。急な下痢は辛いものですし、患者さんとしてはゆっくり説明を受けている場合ではないかもしれませんが、薬局勤務の薬剤師としては患者さんにそうしたことを説明しつつ、原因と症状に合った医薬品を選ぶよう、指導することが求められます。