さ行SOAP(そーぷ)
問題とその解決策を見出す分析法
SOAP(ソープ)とは、主観的・客観的な情報から推測や予測を立て、それをもとに対処法を導き出す分析手法のひとつです。「SOAP」の4文字はそれぞれ情報や評価、それらをもとにした対処法などを表していて、具体的には次の通りです。
S...Subjective Data:主観的な情報。患者さんの話の内容など
O...Objective Data:客観的な情報。診察や検査の結果など
A...Assessment:以上の情報を元にした評価
P...Plan:S~Oを踏まえた上での治療方針、実際に行ったケア
SOAPは薬剤師が薬歴を記録する場合や、医師がカルテを記載する場合にも「SOAP形式」と呼ばれる書式のひとつとして使われます。患者さんが抱えている問題点や診療や検査による客観的な所見、それらから導かれる治療方針などが順を追って整理されるため、理路整然として判りやすいというメリットがあります。
SOAPの本質は「記録の書き方」ではない
一方で、SOAPは決して薬歴などの「書式」だけを表すものではない、ということは知っておく必要があります。SOAPはあくまでも分析法です。SOAPによって分析された結果を記録したものがSOAP形式の薬歴であったり、カルテであったりするのです。
薬歴を書く際には多くの情報が必要になりますが、その多くは患者さんとの対話の中から得られます。患者さんは何かに困っていたり、不安を感じたりして薬剤師にそれを相談します。ですがそうした話は、薬剤にのみ関係するものばかりではありません。医師との相談が必要なことであったり、生活習慣に関わるものであったりします。ですから患者さんとの対話の中で常に問題点を分類し、さらにそれが薬剤師の領分に属するものならSOAPによる分析を行って、問題の解決を図る。それがSOAPの本質です。
SOAPの実効性を高めるためには
質の高い医療を提供するためには、患者さんに関する多くの情報が必要です。中でも患者さん自身から得られる主観的な情報...痛みや悪心はないか、何か困っていることはないか等の情報は、非常に重要なものです。ですがほとんどの患者さんは「スポークスマン」ではありません。薬剤師が欲しい情報を、そのままの形で自発的に伝えてくれることはまずないと思ったほうが良いでしょう。
そのため患者さんに質問をするときは「何をどのように尋ねるか」を考えなくてはなりません。そして患者さんがいま一番気にしていることを、できるだけ詳しく引き出すことが重要なのです。よく言われることとして「単純に『はい・いいえ』で答えられる質問をしない」ということがありますが、これだけでもより多くの情報を患者さんから引き出す呼び水になります。
SOAPは問題解決のための分析法として有用ですが、その効果を高めるためには多くの情報が必要です。ことに患者さん自身の主観的な情報をより多く引き出すためには、会話のしかたをはじめ、コミュニケーション能力を磨くことが大切だといえます。