た行凍結製剤(とうけつせいざい)
プレミクスト製剤にメリットはあるが
凍結薬剤とは、凍結した状態で製剤化されたプレミクスト製剤の総称です。
凍結製剤についてお話しする前に、プレミクスト製剤と凍結乾燥製剤について理解することが必要です。
医療の現場ではさまざまな薬剤を使用しますが、そのうちの多くは注射あるいは点滴として使用されます。そのような形で使われる薬剤については、薬剤と溶解液が混合された「プレミクスト製剤」がベストです。注射用であればアンプルに、点滴用であればガラスボトルやソフトバッグに充填されていれば、使いたいときに手早く準備することができます。
ですが薬剤によっては、液体の状態では非常に不安定なものがあります。それらは光や温度などの外的環境によって化学的な変化が起こりやすく、調整済みの液体の状態では長期保存ができません。
そういった薬剤の中には、特定の感染症に用いるものもあります。こうした医薬品はめったに使う機会がない反面、いつやって来るか判らない患者さんのために、病院としてはある程度の数量を常時在庫しておく必要があります。これは医療機関にとって、大きな負荷となります。
「凍結乾燥製剤」ではダメなのか
一方の「凍結乾燥製剤」は、必要な成分を凍結・乾燥させ、粉末状にしたものです。化学的に安定しており、長期にわたる保存が利きます。これはプレミクスト製剤にはない利点です。
しかし使用するたびに必要量を溶解しなくてはならず、そのために手間と時間がかかるという難点があります。また一度溶解してしまうと「○℃で保存、○時間以内に使用すること」などの条件があるため、保存性は決して高くはありません。さらに化学的に安定しているとはいえ、添加剤を加えて使用するため、成分的な面からはクリーンな医薬品とは言いにくい面もあります。
さらに凍結乾燥製剤で問題視されてきたのは、ヒューマンエラーによる医療過誤が発生しやすい、という点です。「使うたびに溶解・希釈する」という人の手が必要になることで、使用量を取り違えてしまう可能性を、どうしても排除できません。
これらのことからプレミクスト製剤の開発が進み、普及していくことになったのです。
さまざまなメリットを併せ持つ凍結製剤
プレミクスト製剤の利便性を残しながら保存性を高めたものが凍結製剤です。
安定化のための添加剤の必要がなく、長期保存が可能です。すでに調整済みのものですので、解凍すればすぐに使え、ヒューマンエラーの危険性をより低く抑えることにもつながります。
開発・製造にあたる製薬会社から見れば、凍結・解凍に伴う化学的な変化が起こらないか、充分に検討・検証する必要がありますが、使用する側にとってはさまざまなメリットを併せ持つ、利便性の高い医薬品形態といえるでしょう。