た行治験薬管理者(ちけんやくかんりしゃ)
治験で使用する医薬品の管理者
治験薬管理者とは、医療機関で治験を行うとき、使用する治験薬を管理する担当者です。治験実施機関の長が指名すると定められており、原則として指名された薬剤師がその任を負います。これは、厚生労働省令「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(略称:GCP=Good Clinical Practice)で定められています。
人体への効果をみる新薬などの治験では、被験者の安全と人権・福祉の確保が最優先されなくてはなりません。またその一方で、治験によって得られるデータには極めて高い客観性・信頼性が求められます。そのため臨床試験の実施についての国際的な基準は多国間で合意されていますが、それを日本の環境に合わせて整備したものがGCPです。
このGCPは治験の内容を規定しており、治験薬の管理を担当する治験薬管理者の業務についても、非常に細かく規定しています。
治験薬管理者の業務とは
治験薬は、治験において中心的な役割を果たすものです。ですから治験の開始から完了に至るまで、正しく管理され、用いられなくてはなりません。治験薬管理者となった薬剤師は、治験全体の中軸に位置することになります。
その業務内容を簡単に説明しましょう。
まず治験の実施が決まり、医療機関と治験依頼者(多くの場合、製薬会社です)が契約を締結したら、治験薬管理者は使用する治験薬を受領し、納品書と受領書を取り交わします。受け取った治験薬はその他の診療用の薬と混同しないように、別に管理しておかねばなりません。このあたりの業務については「治験薬管理手順書」に従って行います。
また、治験を始める前に担当医師や治験コーディネーターとともに打ち合わせを行い、スムーズな治験ができるように準備しておきます。
単なる「管理人」ではない、治験薬管理者
治験が始まると、治験薬管理者は治験薬の在庫状況や被験者一人ひとりの使用状況を正確に記録し、管理していきます。また治験の途中で依頼者から要請があればモニタリングを行うなど、必要に応じてさまざまな作業をこなします。
そして治験が完了すると、治験薬の使用状況をとりまとめ、残薬があれば治験薬返却書とともに依頼者に返却して、同時に治験薬回収書を受け取ります。こうして治験薬管理者としての仕事が完了となります。
この一連の流れを見てもわかるとおり、治験薬管理者は単なる「管理人」ではありません。治験全体を見渡すポジションに位置しています。したがってこの業務をスムーズに行うためには、医薬品に対する専門知識に加え、管理能力やコミュニケーション能力も必要になります。
望めば誰でも経験できるものではありませんが、チャンスがあれば、薬剤師として経験しておきたい業務ともいえるでしょう。