た行鎮咳薬(ちんがいやく)
鎮咳薬とは
鎮咳(ちんがい)薬とは、その名の通り咳(せき)を止めるための薬です。咳の原因となる咳反射を抑制することにより咳を鎮めます。
鎮咳薬は主に乾性咳に用いられ、大きくは3種類に分類されます。
1つ目が麻薬性中枢性鎮咳薬です。この薬の代表的なものとしては、コデインやジヒドロコデインなどがあげられます。これらの薬は延髄にある咳中枢を抑制することで鎮咳作用を発揮します。ただし、麻薬性鎮咳薬は依存性があります。
2つ目が非麻薬性中枢性鎮咳薬です。代表的な薬としては、ノスカピンやデキストロメトルファン(メジコン)、チペピジン(アスベリン)、グアイフェネシン(フストジル)、ペントキシベリン(トクレス)などがあげられます。これらの薬は、前述の麻薬性中枢性鎮咳薬とは違い、依存性がないことが特長です。
3つ目が末梢(まっしょう)性鎮咳薬です。主な薬としては、ベンゾナテートがあげられます。この薬は肺の伸展受容器(肺の膨張を感知して呼吸中枢に伝達する器官)を抑えることで、鎮咳作用を発揮します。
麻薬性と非麻薬性
「麻薬性」というとリスクを感じる方もいるかもしれませんが、麻薬性と書いてあっても、危険な薬というわけではありません。特にOTC医薬品(旧来の呼称は大衆薬・市販薬)は、成分の濃度が低いため法的な麻薬には当てはまらないのですが、分類上そのようにいっているのです。
ちなみに麻薬性と非麻薬性それぞれの効き目についてですが、一般的には麻薬性の鎮咳薬の方が、非麻薬性の薬よりも効き目は強いといえます。非麻薬性の薬と比べて即効性も優れているため、咳が止まらずに苦しい人、一刻も早く咳を止めたい人には最適な薬といえるでしょう。
ただし、その分デメリットもあります。例えば、喘息(ぜんそく)の人は使うことができません。なぜかというと、喘息の人は気道が狭くなったりしているため、中枢性鎮咳薬で咳の反射だけを止めてしまうと、狭くなっている気道に詰まっている痰(たん)を排出することが困難になり、苦しい症状を悪化させてしまう危険性があるのです。
また、麻薬性中枢性鎮咳薬のコデインは、便秘や排尿困難、口の渇きなどの神経症状がある人には向きません。これはコデインに抗コリン作用があることが理由です。そういった人の場合には、非麻薬性の中枢性鎮咳薬か、去痰(きょたん)剤、または気管支拡張成分の入っている薬が適しているといえます。
小児科や内科で多用されるデキストロメトルファン
デキストロメトルファン(メジコン)は非麻薬性の鎮咳薬であり、依存性の心配はありません。
また、鎮咳作用は強く、麻薬性鎮咳薬のコデインと比較しても、同じくらいの鎮咳作用を示すことが臨床試験により判明しています。デキストロメトルファン(メジコン)は、錠剤や散剤、またシロップなどの剤形をもつ薬であるため、小児科や内科でも多用されることも特長です。