は行発泡錠(はっぽうじょう)
発泡しながら短時間で崩壊する錠剤
必要な薬効成分に加え、炭酸水素ナトリウムとクエン酸あるいは酒石酸を配合した錠剤。ごく少量であっても水分に触れると炭酸ガスを発生させ、また短時間のうちに錠剤が崩壊していく特性を持っています。
発泡錠として作られている医薬品はいくつかありますが、それらはいずれも発泡錠ならではの特性を活用したものになっています。
第一の特性として、発泡錠は泡によって有効成分をその周辺に広げ、しかもある程度の時間、泡とともにその場所に薬効成分をとどめておくことができます。湿潤部位に使用するにはとても有益な特性ですので、局所適用である膣錠は発泡錠剤として作られることが多いようです。
ただし膣錠は製品によって完全に崩壊するまで数十分かかることもあり、その間に体を動かすとこぼれて出てきたりすることもありますから、そうした場合の予防も含めた対応を患者さんに伝えておく必要はあるでしょう。
発泡錠なら薬効成分を素早く放出できる
発泡錠の第二の特性は、崩壊によって薬効成分が素早く放出されるということです。
これは内服薬に限ったことではありませんが、医薬品は有効成分の組成だけでなく、その成分が「どのように体内に放出されるか」ということがとても重要です。一定の量を少しずつ、ある程度の時間をかけて放出していくのが良いのか、必要量を一気に放出したほうが良いのか。これはその薬の目的によって、それぞれに違ってきます。そして「必要量を一気に放出させたい」という場合には、発泡錠が適した錠形となります。
発泡錠は、服用すると胃の中で素早く崩壊し、有効成分を一気に放出します。そのため服用してすぐに効果が得られる、ということになります。
この特性を活かした代表的なものとして、発泡錠形とした頭痛薬が挙げられます。
錠剤と水剤のメリットをあわせ持つ発泡錠
第一・第二の特性を活かして、服用時に水に溶かして飲むことを前提とした発泡錠もあります。「それなら、最初から水剤にしておけばいいじゃないか」という意見もありますが、水剤は保存性や携帯性という点で難があります。毎日自宅で使うだけなら良いのですが、いつでもどこでも使えるように...となると、使いにくさが先に立ちます。
ですが発泡錠にしておけば、そうしたデメリットがありません。錠剤をバッグの隅に入れておくだけですから、携帯性は抜群です。そして服用するときはコップ一杯の水があれば良く、外出先や旅先でも手軽に使えます。しかも水に溶かして服用しますので吸収性が高く、服用後すぐに薬効を得られるというメリットもあります。