は行ビグアナイド薬(BG薬)(びぐあないどやく)
血糖値を下げる糖尿病の薬
ビグアナイド薬(あるいはBG薬)は、血糖値を下げる作用を持つ糖尿病の薬です。
糖尿病の薬にはその作用機序によっていくつかの種類がありますが、BG薬は肝臓・筋肉や脂肪細胞・腸に作用するとされており、血糖値を下げる効果を表します。また血糖値だけでなく、血中の脂質をコントロールしたり脂肪肝を改善したりと、複数の働きを見せる薬です。
BG薬はスルフォニル尿素薬(SU薬)のようなインスリンの分泌を促す作用を持っていません。そのため血糖値の過剰な低下による低血糖の心配が少ない、という利点があります。また食欲を抑える効果も合わせ持っているため、肥満体型の人や、食欲を抑えられずについつい食べ過ぎてしまう...という人に処方されます。肥満によって脂肪肝になってしまうとインスリンの働きが低下してしまいますので、こうした場合には適した薬といえるでしょう。
BG薬の3つの作用
BG薬の持つ作用について、もう少し詳しく見てみましょう。
まず肝臓でグルカゴンという酵素を阻害することで、ブドウ糖の生成(糖新生)を抑えます。この働きにより、肝臓から血中に放出される糖を抑制することができます。
次に筋肉や脂肪細胞での糖の取り込みを促進して、血液中の糖を減らすように作用します。
さらに腸からのブドウ糖の吸収を抑え、血糖値の上昇を防ぎます。
これらの作用については、実は完全に解明されているわけではありません。肝臓での脂質の代謝に関わる生体内の酵素を、BG薬の成分が活性化させることで、血糖値や血中脂質の調整作用を発揮するものと考えられています。
BG薬の副作用「乳酸アシドーシス」
このように、多彩な働きを持つBG薬ですが、副作用として「乳酸アシドーシス」が起こる可能性があります。その発生頻度は諸外国と比較して多いものではありませんが、予後不良となることがあり、死亡例も報告されていますから、処方には万全の注意が必要です。
そもそも乳酸アシドーシスは乳酸の過剰な産生・蓄積、代謝の低下、あるいはその両方に起因して起こるものです。BG薬は肝臓での糖新生を抑えることで血糖値を下げるのですが、このときミトコンドリアにも作用して乳酸を増やす傾向があり、乳酸産生が増加する。、その時の体の状態によって乳酸値のバランスが狂ってしまい、乳酸アシドーシスを発生させる可能性が高まります。
ですから投与にあたっては患者さんの状態を確実に把握し、全身状態の悪い患者さんをはじめ、禁忌とされる症状がないかどうか、十分に注意することが必須です。
また患者さん自身やそのご家族に対しても、脱水のあるときや体調の悪いとき(シックデイ)、過度にアルコールを摂ったときなどには使用を控える等、適切な指導が必要です。