は行不活化ワクチン(ふかっせいわくちん)
不活化ワクチンとは
ワクチンは生ワクチンと不活化ワクチンに大別されます。生ワクチンは病原体を生きたままで、ただし病原性を弱くさせて使用するものであるのに対し、不活化ワクチンは病原体を薬品や紫外線などで処理して、感染力を失わせたり、病原性をなくさせたりしたうえで作られたものです。
そのほか、病原体から毒素を抜き取ったもので作ったワクチンは「トキソイド」と呼ばれますが、これも不活化ワクチンの一種です。不活化ワクチンはその性質上、生ワクチンよりも安全性が高いとされていますが、一方で、接種後に病原体が体内で増殖しませんので、1回の接種だけでは十分な免疫力を獲得しにくく、そのため何回かに分けて接種を受ける必要があります。
もちろん、病原性が低く安全性は高いので、免疫不全症の患者さんにも接種することができます。
どのようなワクチンがあるのか
現在のところ、日本で予防接種として使用されている不活化ワクチンは次の通りです。
・定期接種ワクチン
DPT/DT、日本脳炎、インフルエンザ
・任意接種ワクチン
B型肝炎、破傷風トキソイド、成人用ジフテリアトキソイド、A型肝炎、狂犬病、肺炎球菌(23価多糖体)、ワイル病・秋疫
・子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業
肺炎球菌(7価結合型)、インフルエンザB型(Hib)、HPV
不活化ワクチンは接種後に体内で増殖しませんので、複数回に分けて接種する場合には生ワクチンよりも短い「6日以上」の間隔を空けていれば接種することが可能です。
ワクチンに関して薬剤師ができること
不活化ワクチンは生ワクチンよりも安全性が高いことから、乳幼児への接種に広く用いられています。ですがそうした医療行政の施策とは別に、ワクチンに対する懐疑的な意見というものも存在します。その大多数を形成するのが、お子さんを持つお母さんです。
生ワクチンであろうと不活化ワクチンであろうと、その投与が医療行為である以上、そこには副作用の可能性がたとえわずかでも入り込みます。特に子宮頸がんワクチンなど、実際に重篤な副作用が多々報告されているようなワクチンに対して、母親が敏感になることは容易に想像できることです。
ネット社会に生きる彼女たちはPCやスマホで膨大な情報を得ることができますが、それらの情報のすべてが、中立的で公正な立場から発せられたものとは限りません。肯定・否定いずれかの立場によって書かれ、その意見に偏りのある内容である可能性は否定できないところです。
そこで彼女たちに対して薬剤師ができることは、常に公正・中立、かつ正確で詳細な最新の情報を伝えることです。そうした情報の発信源を添えて伝えるのも良いでしょう。最終的な判断を下すために必要な偏りのない情報を、彼女たちに与えることです。
他の多くの場面と同様、ワクチン接種に関しても、薬剤師には「薬剤の専門家」としてできることがまだまだ数多くあるのではないでしょうか。