や行薬剤師倫理規定(やくざいしりんりきてい)
「薬剤師はいかにあるべきか」
薬剤師倫理規定とは、薬剤師の業務上の基本倫理を定めたものです。1973年に日本薬剤師会が「薬剤師綱領」に基づいて定め、1997年に改定されました。前文と全10条の条文で構成されています。
まず前文で日本国憲法と関連各法を遵守することを宣言し、同時に憲法で保障された人権の中でも「最も基本的な生命・健康の保持増進に寄与する責務」を薬剤師は担っていると述べています。その上で、医薬品の調剤・創製・供給・適正な使用に至るまで「確固たる薬の倫理」が求められる、と明言されています。
その後に続く各条文は決して長いものではなく、また細かな規則を定めたものでもありません。あくまでも薬剤師としての基本的倫理を規定したものです。それだけに各条文の意味するところを充分に理解し、噛みしめた上で業務にあたることが望まれます。
高まる薬剤師の存在感
薬剤師倫理規定が最初に定められてからおよそ四半世紀のちに改定された背景として、薬剤師の存在感が高まったことが挙げられます。
厚生労働省が推進してきたチーム医療の考え方によれば、薬剤師は薬の専門家であり、薬物療法の中心的存在となります。
1992年の医療法改正によって薬剤師が医療の担い手として明記され、さらに4年後の1996年には薬剤師法が改正されて、薬剤師による情報提供の義務化が定められました。こうした流れの中では、医療現場における薬剤師の存在感は高まるばかりですし、患者さんと直接向き合い情報提供する機会も増えていきます。そうなれば、行動倫理も重要性を増していくのも頷けます。
忘れてはならない学習・教育の重要性
この倫理規定に定められた10の条文はいずれも重要なもので、そこに優先順位をつけることはできません。ですが第4条に定められた「生涯研鑽」は、日常的に留意すべき事項でしょう。
医療の分野は日進月歩、毎日のように新たな発見や発明があります。医薬品関連に限っても、多くの情報が日々発信され、治験が積み上げられています。これら最新の情報や知識を常に吸収することは薬剤師の日常業務において非常に重要なことです。知識が増えることはそのまま患者さんの健康を助け、命を守ることに直結するからです。
またこの第4条に見られる「後進の育成に努める」という箇所も重要です。薬剤師は経験の中で多くのことを学びますが、それを後進の育成に役立てることは、薬剤師のみならず医療全体の質の向上にもつながります。
どんな仕事でも、長年続けていると慣れが生じ、心の隙も生まれます。そうしたことのないよう、時にはこの倫理規定を読み返し、思いを新たにしてみてはいかがでしょうか。