や行薬局方(やっきょくほう)
生薬・医薬品の総合規格書
「薬局方」とは、医療行為を行うにあたり必要不可欠な医薬品の規格を定め、情報を収載した公定文書です。世界の主要各国はみなそれぞれに薬局方を発行しており、中には数ヶ国共同で薬局方を作成して共用している例も見られます。
日本では「日本薬局方」として、2016年2月現在で「第16改正」まで版を重ねています。薬局方はその国の医薬品に関する規定の根幹であり、すべての薬剤師にとって、バイブルのような存在といえるでしょう。
薬局方の内容はその国ごとに違いがありますが、日本の場合は収載医薬品すべてについての通則、生薬と製剤それぞれについての総則、さらに医薬品に関する試験法と各医薬品それぞれについての各条から構成されており、まさに薬についてのすべてが規定され、その情報が記載されたものとなっています。
意外と古い、日本薬局方の歴史
「薬局方」という名称はちょっと異質な印象を持たれがちですが、この言葉の源は江戸中期にまでさかのぼるとされています。当時、西洋医学を修めた医師(蘭方医)が海外の医薬書を翻訳した際、その書名を「和蘭局方」と訳したのが始まりといわれます。それ以前にも、現在の中国・宋から伝わった漢方薬の名称・調整法・適応症や用法用量をまとめた書物を「和剤局方」として利用していたこともあり、こうした名称がつけられたと考えられています。
最初に日本薬局方が定められたのは明治19年のことです。当時の日本には開国とともに多くの物品が海外から輸入されましたが、その中には品質の劣る医薬品も多く見られました。それら粗悪な薬品類を規制し、国民の健康と安全を守るために制定されたのが、初版の日本薬局方です。その後も医薬品の開発技術や試験技術の進歩に歩調を合わせ、随時改訂・追補が繰り返されています。
あらゆる情報が網羅された薬局方
日本薬局方の内容は、薬局方が生まれた背景とその沿革をていねいにたどり、度重なる改正のあらましと、そこに参画した人々をもれなく紹介するところから始められています。
そして医療現場で行われるさまざまな試験・測定作業についてその基準となる指針を定め、さらに各種試験で用いられる試薬・試液についても、その調整法や使用法について、こと細かに規定しています。
また医薬品・生薬については、その主体となる成分の分子構造式や性状のほか、複数の薬品を混合して作るものであればその製法、また細粒や錠剤など薬としての形状についてもその指針を定めており、貯蔵方法まで言及されています。
現在、日本薬局方は厚労省のサイト等で公開されており、誰でも手軽に閲覧することができます。PDFファイルにして2200ページにも及ぶ大部なものであり、国内における医薬品の規格情報がすべて記載されたものとなっています。