や行薬剤師国家試験(やくざいしこっかしけん)
薬剤師資格試験の現在
薬剤師業務を行うためには、薬剤師資格が必要です。過去には年2回、資格試験が行われていたこともありましたが、現在では年1回とされています。受験資格にはいくつかの規定があり、基本的には薬学系の大学で6年間のカリキュラムを修了することで試験資格を得られます。
大学での薬剤師の養成課程が4年間から6年間に延長された平成21・22年度は受験者が激減しましたが、その後復調し、平成26年度の受験者数は約1万4千人に上りました。
一方の合格率をみると、こちらも平成21・22年度はグッと落ち込みを見せたものの、その後急速に回復しています。現在では合格率はおおよそ60~80%とされ、年度ごとに増減はあるものの、国家資格試験としては比較的高い合格率を維持しています。
国家資格試験の内容は?
試験内容は物理や化学、生物学といった基礎的な分野と、衛生・薬理、薬物そのものについての知識、病態や薬物治療など臨床的な知識、関連法規や制度、倫理に至るまで、非常に広範囲に及びます。そのため大学での6年間、しっかりと勉強を重ねなければ合格は難しいといわれています。
60~80%という合格率だけを見ると「比較的取りやすい資格」と思われるかもしれませんが、大学側が受験者を絞り込んでいるという実情もあり、決して容易な資格試験ではありません。すでに薬剤師として現場で活躍している方ならば、その現実はよくご存じのことでしょう。
ちなみに試験の合格率は大学によってかなり差があり、この差は高い合格率を目指して国家試験対策に注力するか、あるいは研究機関等で実力を発揮できるよう研究実務に力を入れるかなど、大学側の教育姿勢によって違うともいわれます。
試験合格から始まる薬剤師への道
薬剤師だけではなく、就業にあたって国家資格が必要な仕事というのは数多くあります。医師や看護師などのほか、医療分野以外でも弁護士や教師、司法書士や行政書士など、いずれも仕事をするうえで資格取得が必要条件となっています。ですが、そうした仕事すべてに共通していることは、資格とは単に「就業のための必要条件」にすぎないという点です。
他の項目でも触れていることですが、薬剤師としてより質の高い医療を提供するためには、正確な知識と最新の知見を備えているだけでは十分ではありません。それに加えて、これまでの経験や工夫に基づくコミュニケーション能力や危機管理能力といったスキルが求められます。薬剤師国家試験はそのスタートラインに立つためのいわば準備段階であり、それに合格した瞬間から医療人としての新たな学びの日々が始まるともいえるでしょう。