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緩和ケアにおける薬剤師の重要資格「緩和薬物療法認定薬剤師」

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緩和ケアチームの一員として患者の薬物療法をサポートする薬剤師が「緩和薬物療法認定薬剤師」の資格を持つことで、より高度な緩和ケアを実現できます。緩和ケアは、がん患者の治療に不可欠です。そのため、薬剤師の役割も医師や看護師と同じように重要であり、近年では「基本的緩和ケア」と「専門的緩和ケア」の区分が進んでいる現場も少なくありません。

この記事では、現役の薬剤師である下田 篤男氏が緩和ケアにおける薬剤師の役割と「緩和薬物療法認定薬剤師」の重要性に加え、資格の取得方法・取得条件について解説します。

1.緩和ケアとは

患者の身体的・精神的な苦痛を軽減する「緩和ケア」は、がん治療において重要なアプローチです。現在の医療現場では「基本的緩和ケア」と「専門的緩和ケア」の二段階アプローチが確立されており、疼痛コントロールにより日常活動が可能になったり、不安軽減によって家族との時間の質が向上するなど、患者のQOL向上に貢献しています。

1-1.基本的な緩和ケア

基本的な緩和ケアは、がん診療に携わるすべての医療従事者が日常診療で提供するケアです。「軽度」から「中等度」の痛みに対するオピオイド鎮痛薬(オピオイド受容体に作用し、強い鎮痛作用を示す薬。依存性や習慣性があるため、適切な管理が必要)の使用や副作用対策、患者・家族への精神的支援などが含まれます。

緩和ケアの目的は、患者のQOLを維持しつつがん治療を並行して進められる環境を整えることです。薬剤師は、薬の効果と副作用をモニタリングし、患者の状態に合わせた提案を行います。

1-2.専門的な緩和ケア

基本的なケアでは対応できない複雑な症状の場合は、専門知識を持つ医療者が専門的な緩和ケアを提供します。たとえば、難治性疼痛、神経障害性疼痛、複雑な精神的苦痛、せん妄、家族の問題などは、基本的なケアでは対応できません。専門知識を持つ医療者は、こうした症状に加え、終末期の緊急症状にも専門的な緩和ケアを行います。

専門的な緩和ケアは、医師、薬剤師、看護師など多職種で構成される「緩和ケアチーム」が担当し、「緩和薬物療法認定薬剤師」は、チームの中でも薬物療法の専門家として中心的役割を果たします。

下田氏
下田コメント
超高齢社会にあって、緩和ケアは重要です。鎮痛剤の使用などで緩和ケアに参画することは薬剤師の大切な職能のひとつです。

2.緩和薬物療法認定薬剤師とは

緩和薬物療法認定薬剤師とは

「緩和薬物療法認定薬剤師」は、緩和ケアの現場でがん患者の痛みや不快症状を和らげる薬物療法のスペシャリストです。進行するがんによる複雑な症状に対し、オピオイド管理や副作用対策など高度な専門知識を駆使し、一人ひとりに最適な薬物療法を提案・実践します。

多職種連携(医師、看護師、薬剤師などの医療専門職が連携し、患者さんにとっての最適な医療を提供すること)による緩和ケアチームの中核として、患者のQOL向上に貢献し、つらい症状を抱える患者や家族を薬の専門家として支える重要な存在です。

2-1.緩和薬物療法認定薬剤師の業務内容

緩和薬物療法認定薬剤師は、がん患者の状態を評価しながら最適な薬物療法を提案・実践します。

主な業務内容は、痛みの客観的評価、オピオイドローテーション(現在使用中のオピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)から別の種類のオピオイドに切り替えることで、効果を維持しながら副作用を軽減させる)の提案、副作用対策、薬物間相互作用の確認です。患者・家族への薬剤情報提供や服薬指導も行い、在宅医療への移行も支援します。

例えば「モルヒネを使用しているが、強い便秘と眠気で患者さんのQOLが低下している」というケースに遭遇したとします。このような時、緩和薬物療法認定薬剤師は患者さんの状態を評価した上で「フェンタニルやオキシコドンへの変更が適切ではないか」という根拠に基づいた提案を医師に行います。

また、在宅移行時には「自宅では誰が痛み止めを管理するのか」「突発痛が出たときの対応は」など具体的な懸念に応えるプランを作成。あるケースでは、認知症のある患者さんの家族に対し、貼付剤タイプのオピオイドを選択し、簡便なレスキュー薬の使用方法を指導することも、緩和薬物療法認定薬剤師の役割です。

さらに、緩和ケアカンファレンスへの参加や多職種との情報共有、医療スタッフへの教育活動も担当し、薬物療法だけでなく患者の心理社会的支援にも関わります。

下田氏
下田コメント
緩和ケアにおける緩和薬物療法認定薬剤師の役割は年々拡大しており、この業務内容に加えて、家族の疲労やストレスへの配慮などの家族ケア、延命だけが目的となっている薬剤は中止すべきかや、患者さんは何をどこまで知りたいと思っているかなど、倫理的問題への対応なども現場では求められています。

3.緩和薬物療法認定薬剤師になるには

緩和薬物療法認定薬剤師になるには

「緩和薬物療法認定薬剤師」は薬物療法のスペシャリストです。がん患者の痛みや不快症状を和らげる緩和ケアチームの中核を担い、患者のQOL向上に貢献します。ここからは緩和薬物療法認定薬剤師になるために必要なことを解説していきましょう。

なお、緩和薬物療法認定薬剤師の合格率は公表されていませんが、緩和薬物療法認定薬剤師名簿によると、2025年3月時点では、865人の資格者がいます。

3-1.緩和薬物療法認定薬剤師資格はこんな方におすすめ

緩和薬物療法認定薬剤師の資格は、以下のような薬剤師の方に特におすすめです。

  • がん患者さんや終末期医療に関わる機会が多く、より専門的な知識で患者さんを支えたいと考えている方
  • 多職種連携を重視し、チーム医療の中で薬剤師としての専門性を発揮したい方
  • 患者さんやご家族との深い関わり、単なる薬の説明だけでなく心理的サポートも含めた包括的なケアに携わりたいと考える方

「薬のプロ」としてだけでなく、患者さんの人生の質にも関わる重要な存在として活躍したい薬剤師にとって、価値ある専門資格です。

3-2.緩和薬物療法認定薬剤師資格の取得要件

緩和薬物療法認定薬剤師の資格を取得するためには、日本緩和医療薬学会が定める以下の要件を満たす必要があります。

  • 日本国の薬剤師免許を有すること
  • 薬剤師実務歴3年以上を有する日本緩和医療薬学会の会員であること
  • 認定薬剤師に関する資格(日病薬認定、研修センター認定など)のうち一つ以上の資格を有すること
  • 緩和ケアチーム・緩和ケア病棟、または麻薬小売業者免許取得薬局で1年以上の実務経験
  • 所定の講習等の履修および学会発表実績
  • 緩和医療領域の症例6例の提示

これらの要件は、認定薬剤師としての実践能力と学術的基盤を確保するために設けられています。より詳細な資格の取得条件は、日本緩和医療薬学会のWebサイトを参照してください。

参考資料:日本緩和医療薬学会緩和薬物療法認定薬剤師申請資格|日本緩和医療薬学会

3-3.緩和薬物療法認定薬剤師資格の取得方法

  • 年1回の緩和薬物療法認定薬剤師認定試験に合格する必要がある
  • 認定試験は書類選考を通過すれば受験できる
  • 資格は5年ごとの更新制

緩和薬物療法認定薬剤師の資格は、上記の取得要件を満たしたうえで、緩和薬物療法認定薬剤師認定試験を受験し、書類選考と試験に合格することで取得できます。認定試験は年1回実施されます。筆記試験では緩和医療の基礎知識や薬物療法の専門知識が問われます。

申請時には、日本緩和医療薬学会に対して書類審査料(10,000円)を納める必要があります。書類審査通過後には試験料(20,000円)が別途必要です。認定証の有効期間は5年間で、適切に更新することで資格を維持できます。

3-4.緩和薬物療法認定薬剤師資格の更新方法

緩和薬物療法認定薬剤師の資格更新には、有効期間内に以下の要件を満たす必要があります。

  • 学会会員資格の継続および年会費の完納
  • 認定薬剤師資格の維持
  • 認定期間内に3年以上の緩和医療実務経験
  • 所定の単位(計100単位)の取得
  • 学会での発表実績
  • 緩和医療領域の症例5例の提示

更新手続きは資格満了の一定期間前から可能で、更新審査料(10,000円)が必要です。なお、正当な理由がある場合は、更新猶予制度も設けられています。

参考資料:日本緩和医療薬学会緩和薬物療法認定薬剤師 更新要件|日本緩和医療薬学会

3-5.上位資格「緩和医療専門薬剤師」および「緩和医療暫定指導薬剤師」について

緩和薬物療法認定薬剤師の上位資格として、「緩和医療専門薬剤師」および「緩和医療暫定指導薬剤師」があります。

「緩和医療専門薬剤師」は、緩和薬物療法認定薬剤師として一定期間(3年以上)の経験を積み、より高度な臨床能力と研究実績を持つ薬剤師に与えられる資格です。この資格を持つ薬剤師は、緩和医療の高度な実践者として、複雑な症例に対する薬物療法の立案・実施や、他の医療機関への助言・指導など、リーダー的役割を担います。

「緩和医療暫定指導薬剤師」は、指導者としての資質も認められた薬剤師に与えられる資格です。次世代の緩和医療薬剤師の育成・教育を担う立場で、研修会の講師や症例指導、研究指導を行いながら、緩和医療薬学の発展に貢献します。

これらの上位資格を取得すれば、緩和医療全体の品質向上や発展に寄与するとともに、薬剤師自身のキャリアパスを広げられます。

参考資料:緩和医療専門薬剤師|日本緩和医療薬学会 参考資料:緩和医療暫定指導薬剤師|日本緩和医療薬学会
「認定薬剤師」について

本記事では、認定薬剤師とは何か、資格を取得することで得られるメリットは何かといった内容について詳しく解説します。

下田氏
下田コメント
緩和薬物療法認定薬剤師は認定要件が多く、難易度の高い認定資格といえるでしょう。しかし、取得することで薬剤師としての可能性を高めてくれる資格であることは間違いありません。

4.緩和薬物療法認定薬剤師の需要は今後も高まる

がん患者数の増加が見込まれる高齢化社会の中で、緩和ケアの重要性はますます高まっています。また、がん対策基本法の改正により、すべてのがん診療連携拠点病院に緩和ケアチームの設置が義務付けられました。これにより、専門的知識を持つ薬剤師の需要も拡大しています。

また、在宅医療が推進されているため、地域の薬局や在宅医療の現場でも、緩和ケアの知識を持つ薬剤師も必要です。緩和薬物療法認定薬剤師は、患者中心の医療への転換が進む中、患者のQOL向上に直接貢献できます。薬物療法のエキスパートとして、社会からの期待と需要がますます高まっていくでしょう。

緩和ケアにおける薬剤師の役割は、単なる調剤業務にとどまりません。薬剤師は、多職種チームにおける薬物療法の専門家として、患者の苦痛緩和と生活の質向上に大きく貢献します。緩和薬物療法認定薬剤師の資格取得は、薬物療法の専門性を社会に示し、より質の高い緩和ケアを提供するための重要なステップです。

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監修者

下田氏

薬剤師・薬局経営コンサルタント 下田 篤男

京都大学薬学部総合薬学科卒業。 卒業後は調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務。 総合病院門前などで管理薬剤師として経験を積んだのち、マネージメント業務にも携わる。現在は薬剤師として働く傍ら、医療記事の執筆、編集や薬局経営コンサルタントとしても活動している。

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