漢方薬剤師になるにはどうしたらいい?必要な資格や仕事内容も徹底解説!
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高齢化が進み、国民の健康意識が向上している昨今、自分自身の健康を管理するセルフメディケーションに関心を寄せる人が増えています。その中でも注目されているのが、漢方薬や生薬です。専門家の需要も高まっており、漢方薬に特化した「漢方薬剤師」を目指す薬剤師も少なくありません。そこで今回は、現役の薬剤師であり、薬局コンサルタントとしても活躍する下田篤男氏に、漢方薬剤師になるメリットや、「漢方薬・生薬認定薬剤師」の認定を取得する方法について解説いただきました。漢方薬剤師に興味がある方は、ぜひ読み進めてみてください。
目次
漢方薬剤師になるにはどうしたらいい?必要な資格や仕事内容も徹底解説!
漢方薬がなぜ注目されてきているのか
医療の世界では、病気や不調に対する多様なアプローチがあり、漢方薬もそのひとつです。西洋薬と漢方薬の異なる点や特長、注目されている理由をご紹介していきましょう。
そもそも漢方薬と西洋薬の違いは?
現在、医薬品として用いられている西洋薬は、多くが人工的に化学合成されたものです。単一の成分で構成されている薬が多く、特定の症状や疾患に対して高い薬理作用があります。原因が明確で、治療方法も確立している疾患に対しては、西洋薬が有効と考えられています。
一方、漢方薬は、動植物や鉱物といった天然の素材を組み合わせて作られるものです。中医学を基本にしつつ、日本の気候や、日本人の体質に合わせた独自の漢方薬が発展してきました。
漢方薬は複数の成分から構成されているため、複数の病状に対して薬理作用がある薬です。西洋薬では対処が難しい体の不調や原因のはっきりとしない疾患などに、漢方薬が活用されている傾向があります。
セルフメディケーションで注目される漢方薬
漢方薬は医療用医薬品としてだけでなく、一般用医薬品(OTC医薬品)としても広く用いられており、ドラッグストアやインターネット通販でも購入が可能です。セルフメディケーションに対する関心が高まっている昨今、従来の西洋薬による治療では対処できなかった症状にも、効果が期待できるとして注目を集めています。
漢方薬剤師を目指すなら「漢方薬・生薬認定薬剤師」の資格を取得しよう?
漢方薬剤師を目指す方には、「漢方薬・生薬認定薬剤師」の資格取得がおすすめです。この資格を取得すれば、漢方薬や生薬に関する体系的な知識を深く学べます。
「漢方薬・生薬認定薬剤師」とは
「漢方薬・生薬認定薬剤師」は、日本薬剤師研修センターが認定する資格であり、漢方薬や生薬について専門的な知識を持つことを証明するものです。この資格は、医療現場における漢方薬を用いた治療や、指導を的確に行う能力の取得を目的としています。
「漢方薬・生薬認定薬剤師」の資格を取得すれば、漢方薬の調剤や服薬指導、生薬の選定や適切な使用法についての専門的なアドバイスが可能になるでしょう。また、地域の患者さまに、中医学の観点からのアプローチを提供し、より充実した医療サービスの展開も可能です。
「漢方薬・生薬認定薬剤師」の取得方法
漢方薬・生薬認定薬剤師の資格取得には、下記の要件をすべて満たす必要があります。これ以下の情報はすべて、2025年3月時点の情報をもとに記載しています。更新がある場合もあるためご留意ください。
- 公益財団法人日本薬剤師研修センターおよび、一般社団法人日本生薬学会が実施する「漢方薬・生薬研修会」に参加し、出席率80%以上で修了すること。
- 薬用植物園での実習を受講し、実習レポートを提出すること。この実習は、研修会と合わせて2年間の受験資格を有します。
- 研修会および実習を修了した後、試問試験に合格すること。
認定審査料は、22,000円(税込)です。試験の合格発表は、日本薬剤師研修センターの公式情報を通じて行われますが、具体的な合格率は公表されていません。ただし、研修だけでなく実習やレポートも必須となっています。受験資格を得ること自体に、かなりの時間と労力を要するでしょう。試験に関しても、研修会での講習内容をしっかりと理解し、実習での経験を深めることが合格への鍵です。
この資格を取得すると、漢方薬・生薬認定薬剤師として名簿に記載され、漢方や生薬に関する専門知識を有する証明となります。漢方薬剤師として、地域医療や患者サポートにおいて一層の貢献が期待でき、漢方に興味のある薬剤師には特に有益な資格といえるでしょう。
「漢方薬・生薬認定薬剤師」は更新制なので注意が必要
「漢方薬・生薬認定薬剤師」の資格更新は、薬剤師が最新の知識を維持し続けるために設けられた制度で、3年ごとに行われています。その期間内に、指定された研修会や講座を通じて、漢方薬や生薬に関連する研修で必須研修の15単位以上を含む、合計30単位以上の取得が必要です。
さらに、毎年最低5単位を取得するという、継続的な学習義務も課されています。また、更新申請時には新規申請時と同一の22,000円の認定料が必要で、更新認定申請は、必要単位を満たしたうえで、認定終了日の2カ月前から終了日の3カ月後までに申請を行わなければなりません。

- 下田コメント
漢方薬・生薬認定薬剤師は、漢方薬を扱う仕事をしたい薬剤師にとってはぜひとも取得したい資格です。研修を受けることで取得できる研修認定薬剤師と違い、レポートの提出や試験を課されるため、難易度は高いですが、漢方薬について体系的に知識を習得できるため、今後の業務にも活かすことができます。2024年9月時点の情報によると、3,506名の漢方薬・生薬認定薬剤師が活躍中です。
https://www.jpec.or.jp/download/yoran2024.pdf 引用:漢方薬・生薬認定薬剤師制度とは|公益財団法人 日本薬剤師研修センター
https://www.jpec.or.jp/nintei/kanpou/index.html
「漢方薬・生薬認定薬剤師」を取得するメリット
高齢者の健康意識の向上により、漢方薬剤師の需要も高まっています。ここでは、漢方薬剤師として働くことで得られるメリットを解説していきましょう。
専門領域での高い評価
原因不明の症状や不調に悩む多くの人々が、漢方薬の持つ可能性に期待を寄せています。さまざまな種類の漢方薬の中から、それぞれの症状や体質に合った処方をするためには、中医学(中国医学)をはじめとした専門知識を備えた漢方薬剤師の存在が不可欠です。
適切な処方や助言のできる漢方薬剤師の評価は高く、今後も需要が高まっていくと考えられています。また漢方薬の専門家として患者さまに対応するため、評価に応じて報酬が上がる可能性もあるでしょう。
資格を取得しているという信頼感を顧客に与える
「漢方薬・生薬認定薬剤師」の肩書きを持つことで、患者さまに対する説明に説得力が増し、専門性の高いアドバイスを提供できるでしょう。漢方薬剤師と薬剤師の違いは、漢方薬に関して専門的な説明ができるかどうかです。
たとえば、発熱を伴う風邪の対応においても、患者さまの病状や体質に応じた細やかな対応が可能です。漢方に詳しくない薬剤師は一般的な薬の提供にとどまるケースがほとんどです。一方、「漢方薬・生薬認定薬剤師」であれば、個別の体質や症状に応じた漢方薬を推奨できます。
医療費高騰で高まる需要
超高齢化が進む日本では、将来的な医療費の負担増が深刻な課題となっています。この状況を踏まえ、厚生労働省は健康増進対策を強化し、特に漢方薬を扱う東洋医学への関心と需要が高まってきました。さらに、国内での生薬原料の生産も進んでいるため、漢方を専門に扱える薬剤師の役割がより重要視されています。
薬科大学の中にも、漢方薬剤師を養成するための「漢方薬学科」を創設する大学が増えており、漢方薬に精通した薬剤師の養成は、医療体制の充実に寄与すると期待されています。
転職に有利
漢方薬剤師は、患者さまの症状や体質に応じた漢方薬を選ぶため、単に知識を持つだけでは即戦力にはなりません。しかし、「漢方薬・生薬認定薬剤師」は、転職を有利に進められる資格です。漢方薬剤師として経験を積みたいなら独学するだけではなく、資格取得をおすすめします。
また、キャリアを積んだ後には独立し漢方薬局を開業することも可能です。漢方薬剤師は将来的な需要が見込まれ、高収入や待遇の向上も期待できるでしょう。

- 下田コメント
漢方薬は、今後の医療において重要度が高まっていることから、漢方薬・生薬認定薬剤師の需要も高まると考えられます。セルフメディケーションの観点からも、漢方薬に対しての知識を増やすことは、薬剤師としてのスキルアップにもつながるでしょう。
「漢方薬・生薬認定薬剤師」の仕事内容・勤務場所は?
漢方薬・生薬認定薬剤師は、伝統的な漢方の知識と現代医学を組み合わせて活用し、患者さまの健康維持や病気の予防に貢献します。ここでは、漢方薬・生薬認定薬剤師の具体的な仕事内容とその重要性を解説します。
患者さまへのカウンセリングが重要
漢方薬・生薬認定薬剤師の重要な役割のひとつが、患者さまへのカウンセリングです。中医学では、患者さまの体質や具体的な症状、生活習慣などを詳細にヒアリングし、「証」と呼ばれる個々の状態を判断します。この証に基づき、適切な漢方薬を選定できるかどうかが治療の鍵です。
漢方薬治療では、カウンセリングを通して患者さまの健康状態を総合的に把握し、もっとも効果的な治療法を提供します。このため、漢方薬・生薬認定薬剤師には、高いコミュニケーション能力と専門的な知識が必要です。
漢方薬・生薬の調剤
漢方薬や生薬の調剤では、処方された漢方薬を最大限の効果で服用できるように煎じたり、ほかの生薬と適切に混合したりすることもあります。煎じる作業は特に重要で、時間や温度を細かく管理して生薬の有効成分を最大限に引き出す必要があります。
漢方薬の調剤は、漢方薬・生薬認定薬剤師の高度な専門知識と調剤技術が求められ、患者さまの症状にもっとも効果的な治療法の実現に向け、重要な役割を果たします。
調剤薬局やドラッグストアだけでなく、漢方薬局でも勤務できる
漢方薬・生薬認定薬剤師は、多様な職場環境で働くことができます。調剤薬局やドラッグストアはもちろん、漢方専門の薬局での働き方も選択肢のひとつです。
漢方薬局では、より専門的な知識とスキルを活かし、漢方を求める患者さまに特化したサービスを提供できるでしょう。また、患者さまにより深い医療的助言を行いつつ、個別のニーズに応じた治療も提供できます。
「漢方薬・生薬認定薬剤師」に必要なスキル
将来的に需要が高まるとされる漢方薬剤師には、求められる要件や資質があります。漢方薬剤師が持つべき専門知識や技術、患者さまへのアプローチ方法、業務を遂行するうえでの重要なポイントを紹介していきましょう。
患者さまに寄り添うコミュニケーション能力
症状は同じだとしても、漢方薬は患者さまそれぞれの体調や体質に応じて使い分けなくてはなりません。そのため、漢方薬剤師は患者さまの悩みや体質について詳しく聞き出し、密なコミュニケーションをとっていけるかどうかで治療の質が変わってきます。
さらに、漢方薬を用いる治療は長期間を要するものもあるため、患者さまからの信頼を得られるかどうかも重要です。ささいなことでも相談してもらえるよう、しっかりと信頼関係を構築するスキルが求められます。
漢方薬や中医学の知識を得る
漢方薬を理解するにあたって、中医学の知識は必要不可欠です。また、漢方薬について学びたい場合は、まずは身近な医療用漢方薬の知識から身につけていくことをおすすめします。
漢方薬は、さまざまな製薬メーカーから販売されています。パッケージに記載されている配合成分や、適応症に注目してみるだけでも、多くの情報が得られるでしょう。まずはそれぞれの成分の持つ役割を知ることが、漢方薬剤師への第一歩です。
常に情報をアップデートする姿勢
漢方薬・生薬認定薬剤師は、常に最新の情報をアップデートする姿勢が重要です。
漢方薬・生薬認定薬剤師は、西洋薬との併用を考慮しなければならないときもあるため、それぞれの治療薬の効果や相互作用、副作用について熟知していなければなりません。そのため、漢方薬の知識を深めるだけでなく、幅広い医療知識を身につけることが求められます。
また、新しい研究結果や医療ガイドラインの変化に、対応し続けることも大切です。学会やセミナーに参加し、漢方薬の専門家としてのスキルを常に向上させ、最新の医療情報を患者さまに還元できるようにしなければなりません。
判断力・実践力を磨き上げる
漢方薬・生薬認定薬剤師になるには、高度な判断力と実践力が求められます。患者さまとのカウンセリングでは、患者さまの体質や症状を詳細に把握しながら、最適な漢方薬を選定する必要があります。
患者さまの生活習慣や環境、既往歴などを総合的に考慮し、個別化された治療プランを立てるスキルが必要です。豊富な知識と経験に基づく判断が必要であり、さらに実際に効果的な治療が行えるよう実践力も磨かなければなりません。

- 下田コメント
漢方薬と西洋薬のハイブリッド医療は、今後多くの医療現場で採用されていくでしょう。そうなると、漢方薬の認定資格である漢方薬・生薬認定薬剤師もより注目されていくはずです。自分のキャリアパスを広げたい薬剤師の方は、ぜひ資格取得を検討してみてください。
キャリアパスの選択肢のひとつとしての漢方薬剤師
漢方薬剤師は、多くの人々の健康増進やセルフメディケーションに貢献できる、非常にやりがいのある仕事です。医療業界において、今後の需要も高まると考えられているため、薬剤師のキャリアパスの選択肢のひとつともなるでしょう。
アポプラスキャリアでは、薬剤師専門のコンサルタントが転職をサポートしています。漢方薬の取り扱いがある薬剤師求人もご案内しているため、漢方薬剤師としての転職を検討されている方は、お気軽にご相談ください。
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薬剤師・薬局経営コンサルタント 下田 篤男
京都大学薬学部総合薬学科卒業。 卒業後は薬剤師として調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務。 総合病院門前などで管理薬剤師として経験を積んだのち、マネジメント業務にも携わる。現在は薬剤師として働く傍ら、医療記事の執筆、編集や薬局経営コンサルタントとしても活動している。
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