「漢方薬剤師」について
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高齢化が進み、国民の健康意識が向上している昨今では、自分自身の健康を管理するセルフメディケーションに関心を寄せる人も増えています。その中でも注目されているのが、漢方薬や生薬です。 漢方薬は、個人の症状や体質によって使い分ける必要があります。そのため、専門家の需要も高まっており、漢方薬に特化した「漢方薬剤師」を目指す薬剤師も増えています。そこで、漢方薬剤師になるメリットや、「漢方薬・生薬認定薬剤師」の認定を取得する方法などについてご紹介します。
そもそも漢方薬と西洋薬の違いは?
現在、医薬品として用いられている西洋薬は、多くが人工的に化学合成された物です。西洋薬は単一の成分で構成されている物が多く、特定の症状や疾患に対して高い薬理作用があります。そのため一般的には、原因が明確で治療方法も確立している疾患に対しては、西洋薬が有効と考えられています。
一方、漢方薬は、動植物や鉱物といった天然の素材を組み合わせて作られる物です。日本においても、中国から伝わった漢方処方に基づいて、日本の気候や日本人の体質などに合わせた漢方薬が発展してきました。
西洋薬とは異なり、漢方薬は複数の成分から構成されているため、1種類の処方でも複数の病状に対して薬理作用があります。そのため、西洋薬では対処が難しい体の不調や原因のはっきりとしない疾患などに、漢方薬が活用されている傾向があります。
認定薬剤師「漢方薬・生薬認定薬剤師」とは?
漢方処方を用いる漢方薬剤師は、他の薬剤師と同様に調剤薬局やドラッグストアに在籍し、漢方薬・生薬を調剤します。
一般的な薬剤師は医師の処方せんに基づいて調剤を行うことがほとんどですが、漢方薬剤師の場合は患者や来店客から相談を受け、症状や体質に合った漢方薬を処方していく仕事がメインとなります。そのため、漢方薬剤師は一般的な薬剤師と比べ、患者や来店客の健康管理・治療に寄り添った仕事となります。
漢方薬剤師になるメリット
高齢者の健康意識が高まっていることから、漢方薬剤師のニーズも高まっています。そこで、漢方薬剤師になることで得られるメリットについて、4つの観点から見ていきましょう。
医療費高騰で高まる需要
超高齢化の進む日本では、将来的に医療費の負担が増大することが危惧されています。このことを背景に、厚生労働省は健康増進対策を推進しており、漢方薬を取り扱う東洋医学分野への需要も高まりつつあります。
国内における生薬原料の生産も進められているため、今後は漢方薬を取り扱うことのできる薬剤師の存在は重宝されると考えられています。
セルフメディケーションで注目される漢方薬
漢方薬は医療用医薬品としてだけでなく、一般用医薬品(OTC医薬品)としても広く用いられています。セルフメディケーションに対する関心が高まっている昨今では、従来の西洋薬による治療では対処できなかった症状にも効果が期待できる物として注目を集めています。そうした面からも、漢方薬剤師の需要は高まりを見せています。
専門領域での高い評価
原因不明の症状や不調に悩む多くの人々が、漢方薬の持つ可能性に期待を寄せています。さまざまな種類の漢方薬の中から、それぞれの症状や体質に合った処方をするためには、中医学(中国医学)をはじめとした専門知識を備えた漢方薬剤師の存在が不可欠です。適切な処方や助言のできる漢方薬剤師の評価は高く、今後も需要が高まっていくと考えられています。
転職に有利
漢方薬の専門家である漢方薬剤師は重宝され、専門領域では特に高い評価を得られるでしょう。ただし、漢方薬剤師は患者それぞれの症状や体質に応じた漢方薬を選択していくため、知識さえ身に付ければすぐに活躍できるというわけではありません。
しかし、転職の応募書類に漢方薬剤師としてのスキルの証明になる漢方薬・生薬認定薬剤師の記載があることで、転職を有利に進めることができます。漢方薬剤師を目指すのであれば、独学ではなく、漢方薬・生薬認定薬剤師の認定を取得することをおすすめします。また、漢方薬剤師として一定のキャリアを積んだ後は、独立して漢方薬局を開くこともできます。漢方薬剤師となることは、将来的な需要があるだけでなく、高収入や待遇アップも期待できるでしょう。
漢方薬・生薬認定薬剤師になるには
漢方薬剤師になるための資格はありません。しかし、先程説明したように、漢方薬の専門家としてのスキルを証明できる漢方薬・生薬認定薬剤師制度があります。ここでは、その認定取得の条件や、認定試験について見ていきましょう。
認定取得の条件
漢方薬・生薬認定薬剤師制度は、公益財団法人日本薬剤師研修センターと一般社団法人日本生薬学会による認定制度です。取得することで、漢方薬や生薬に関する専門的な知識を修得し、能力と適性を持つ薬剤師であることを証明できます。
認定取得の条件は、次の3点を満たしていることです。
- 日本の薬剤師免許を所持している
- 日本薬剤師研修センターおよび日本生薬学会によって実施された「漢方薬・生薬研修会」を修了している
- 試問に合格している
また、認定取得後は3年ごとに更新制度があり、3年のあいだに研修に参加したり、単位を取得したりする必要があります。
試問の内容
漢方薬・生薬認定薬剤師制度の試問では、漢方薬・生薬に関する基本的な知識が問われます。漢方薬・生薬研修会を修了した後に試問を受けることとなりますが、試問を受けられるチャンスは、修了証の発行から2年間のうちの2回です。
つまり、1回目で受けられなかったり不合格となってしまったりした場合でも、次年度に限り、もう1回チャンスがあります。
なお、認定を取得した漢方薬・生薬認定薬剤師数は、次のとおりです(公益財団法人日本薬剤師研修センター「漢方薬・生薬認定薬剤師の認定者名簿」2018年12月末時点)。
- 漢方薬・生薬認定薬剤師数:
- 3,381名(新規認定者:1,334名/更新認定者:2,047名)
漢方薬剤師に求められること
将来的な需要の高まっている漢方薬剤師ですが、実際どのようなことが求められるのでしょうか。以下に、その資質やポイントについてまとめてみました。
患者に寄り添うコミュニケーション能力
症状は同じだとしても、漢方薬は患者それぞれの体調や体質に応じて使い分けなくてはなりません。そのため、漢方薬剤師は患者の悩みや体質について詳しく聞き出し、密なコミュニケーションをとっていけるかどうかで治療の質が変わってきます。
さらに、漢方薬を用いる治療は長期間を要するものもあるため、患者からの信頼を得られるかどうかも重要です。些細なことでも相談してもらえるよう、しっかりと信頼関係を構築するスキルが求められます。
漢方薬や中医学の知識を得る
漢方薬を理解するにあたって、中医学の知識は必要不可欠です。また、漢方薬について学びたい場合は、まずは身近な医療用漢方薬の知識から身に付けていくことをおすすめします。
漢方薬はさまざまな製薬メーカーから販売されていますが、パッケージに記載されている配合成分や適応症に注目してみるだけでも、多くの情報が得られます。まずはそれぞれの成分の持つ役割を知ることが、漢方薬剤師への第一歩といえるでしょう。
勉強会や研修会に参加する
漢方薬のメーカーや薬局では、漢方薬を普及させるために勉強会や研修会を開催しているところがあります。漢方薬剤師のスキルアップにも役立つため、情報をチェックして積極的に参加してみましょう。
例えば、勉強会のテーマ例としては、次のようなものがあります。
- 薬剤師なら押さえておきたい漢方の基礎知識
- 漢方を活用したケアの事例
- 漢方を用いた不定愁訴の改善方法
- 漢方を用いた健康管理サポートや体調コントロールについて
初学者向けの内容から、特定の分野に焦点をあてた専門的な事例の解説まで、幅広いテーマで勉強会やセミナーが開催されています。患者や来店客のさまざまな症状に対応できるよう、日頃から受講しておくといいでしょう。
キャリアパスの選択肢のひとつとしての漢方薬剤師
漢方薬剤師は、多くの人々の健康増進やセルフメディケ―ションに貢献できる、非常にやりがいのある仕事です。医療業界における今後の需要も高まると考えられているため、薬剤師のキャリアパスの選択肢のひとつともなるでしょう。
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