薬剤師は飽和状態?現場の現状、今後も年収・キャリアを高めるには
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薬剤師として働く中で、「キャリアや年収など将来性はあるのか?」「転職市場において今後ますます有効求人倍率は減っていくのではないか」といった不安を抱える方がいるかもしれません。
本記事では、薬剤師の飽和にかかわる実態や現場の認識を解説し、キャリアアップ・年収アップを叶えるためには何をすべきか考えていきます。
薬剤師は飽和状態だと言われる一方、現場によっては人手不足が続いているというパラドックスが存在しています。その辺りについても詳しく解説しますので、薬剤師として充実したキャリアを築くための転職先を探している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 薬剤師は飽和状態になっている?

まずは、そもそも薬剤師は飽和状態になっているのか確認していきましょう。
厚生労働省の調査に、全国の薬剤師の需要と供給の人数を調べたものがありました。
調査によると、令和4年時点で全国の薬剤師の需要は32.0万人、実際に供給されている人数は32.5万人でした。つまり、薬剤師の数は充足しており、やや飽和状態にあると言えます。
また、薬剤師の数は年々増加傾向にあり、今後も需要に対して、供給が上回っていくと予想されています。具体的には、2045年には薬剤師の人数が43.2万人~45.8万人に達するのに対し、需要がある人数は33.2万人~40.8万人程度になると見込まれています。そのため、薬剤師の飽和は今後問題になっていくでしょう。

※出典:「第13回第8次医療計画等に関する検討会 薬剤師関係について」|(厚生労働省)
2. 薬剤師の飽和状況に対する現場の認識

一方、現場では真逆の声があるようです。
厚生労働省の調査によると病院や薬局といった職場では薬剤師の人数が不足しているという声が多く出ており、「薬剤師が不足している」と認識している施設の割合は、病院が64.8%、薬局:41.2%となっています。
薬剤師の飽和状況に対する各現場の認識について、それぞれ解説していきます。
2-1. 病院の場合
病院薬剤師の場合、病床の規模や医療機能によって認識が異なるようです。
「病床数が多い病院」ほど、薬剤師が足りないと感じる割合が高い傾向があります。100床未満の病院において「(薬剤師が)全く足りない」と回答した割合は16.8%ですが、400床以上の病院では47.8%に達しています。
また、医療機能別に見ると、「高度急性期機能病院」において薬剤師の不足を感じている割合が高いです。「(薬剤師が)全く足りない」と回答した病院の割合は、慢性期機能病院は13.2%、急性期機能病院では29.4%、高度急性期機能病院では49.3%にのぼります。
※出典:「令和3年度厚生労働省医薬・生活衛生局総務課委託事業 薬剤師確保のための調査・検討事業報告書 p39」|厚生労働省
大規模および急性期病院で薬剤師不足の認識が高い要因には、薬剤師業務の広範さが考えられます。
処方箋対応への調剤業務はもちろん、服薬指導や薬剤管理、ピッキングなど一部の業務をおこなうファーマシーテクニシャン(薬剤師からの指示に基づいて調剤業務の補助業務をおこなうスタッフのこと)などへの指導、セルフメディケーションの手伝いといった業務も薬剤師が対応します。
また、治療薬が変わったときに患者さまへおこなう、効能、副作用などの説明も薬剤師の重要な業務です。さらに処理する処方箋枚数が多い職場では、薬剤師の人数も多くなるため、担当者や担当業務をまとめるマネジメント的な役割が求められるケースもあります。
このように薬剤師は業務内容が多岐にわたるのです。
これらの要因が相まって、大規模・急性期病院を中心に薬剤師が足りないと感じられるのでしょう。
病院薬剤師の年収について、職場別の違いや年収アップを目指すための具体的な方法を解説します。
2-2. 薬局の場合
薬局の場合、薬局薬剤師の数は規模や立地によって異なるようです。
厚生労働省の調査によると、法人規模が大きくなるほど薬剤師が「やや足りない」と感じる割合が高くなっています。単独で営業している薬局では28.5%、2施設以上10施設未満の薬局では36.4%、10施設以上展開する薬局では40.2%の割合で、薬剤師が不足していると感じています。
※出典:「令和3年度厚生労働省医薬・生活衛生局総務課委託事業 薬剤師確保のための調査・検討事業報告書 p39」|厚生労働省
また、人口の少ない地域では薬剤師不足の問題がより深刻と言われています。地方では、都市部に比べて薬剤師の確保が難しいため、薬局の運営に支障をきたしているケースもあるようです。
このように、薬局の規模や立地によって薬剤師の充足状況は大きく異なり、とくに大規模法人や人口の少ない地域では薬剤師等の不足が顕著であると言えます。
調剤薬局で働く薬剤師の年収事情と、年収を決める要素について詳しく解説します。調剤薬局への転職を検討している薬剤師の方はぜひご一読ください。
2-3. ドラッグストア
ドラッグストアに関しては、人手不足に関する公的なデータはありませんでした。そのため、市場の規模から人員の需要を考えてみます。
日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の調査によると、全国のドラッグストアの2023年度における総売上高は9兆2022億円であり、前年度からの伸び率は105.6%となっています。全国総店舗数も前年度に比べて増えていることがわかります。
ドラッグストア実態調査の結果
全国総売上高 | 総売上高の前年からの伸び率 | 全国総店舗数 | |
---|---|---|---|
2023年度 | 9兆2022億円 | 105.6% | 2万3041店舗 |
2022年度 | 8兆7134億円 | 102.0% | 2万2084店舗 |
2021年度 | 8兆5408億円 | 106.3% | 2万1725店舗 |
※出典:【2024年発表】ドラッグストア売上高ランキング!登録販売者必見の業界ニュースも解説(アポプラス登販ナビ)
ドラッグストアの調剤額(非協会分を含む併設薬局の推計値)は1兆4025億円と、前年度から9.5%増加しているとのことでした。
ドラッグストア業界では、自社の生き残りをかけて、調剤併設型の店舗の新規出店や経営統合などさまざまな戦略を打っており、市場規模の拡大が今後数年続くと考えられています。市場拡大に伴い人員の需要は増すと考えられるため、直近で薬剤師が飽和することはおそらくないでしょう。
一方でこの流れは永遠に続くわけではありません。数十年後には、少子高齢化などの影響で、売上や出店スピードが頭打ちになると考えられます。
ドラッグストア業界における薬剤師は、現在の成長機会を最大限に活用しつつ、将来的な変動にも備える必要があります。
業界のニュースやトレンドに常にアンテナを張り、適切なタイミングでの転職や資格取得をするなど、キャリア戦略を練ることが重要です。
ドラッグストアで働く薬剤師の具体的な仕事内容や年収、働き方について詳しく解説していきます。
2-4. 企業
製薬系の企業に関しても人手不足に関する公的なデータがなかったため、近年の市場状況などから予想してみます。
製薬業界では、国内の企業に比べて、外資系企業のほうが新薬の開発力や製造力が強いです。
そんな中、昨今の新型コロナウイルスの蔓延で、国内で薬不足が発生する事態がありました。この経験から、国と業界では新薬の開発や生産の体制を強化する気運が高まっています。
また、医薬品の需要は高齢化の影響もあり、今後さらに増加すると予測されています。これらに対応するためには研究や製造の分野での人材強化が必要です。
研究や開発などの分野では、優秀な薬剤師の需要が高まると考えられるでしょう。
企業薬剤師の中にもさまざまな種類があり、それぞれ果たす役割は異なります。その具体的な種類・仕事内容・年収についてご紹介します。
3.「全国的には薬剤師が飽和」⇔「現場では不足」というパラドックス

ここまで述べた通り、全国的には薬剤師が飽和している一方で、現場では薬剤師は不足している、という矛盾が発生しています。
この矛盾から「薬剤師の偏在」という問題が見えてきます。
厚生労働省による「地域別薬剤師偏在指標」の報告によると、首都圏、大阪、兵庫、広島、福岡などの都市部には多くの薬剤師がいる一方で、福井、青森、富山をはじめとした地方には薬剤師が少ないという現状が浮き彫りになっています。今後もこの偏在傾向は拡大すると予想されており、地域によって薬剤師の不足が顕著になる可能性が高いです。
地方で薬剤師が不足する理由として、少子高齢化や過疎化が挙げられます。少子高齢化による労働人口の減少、過疎化による若い世代の地方離れ、高齢化による薬局のニーズ増加という3重の要因が重なり、地方では薬剤師の人数が不足しているのです。
一方、都市部で薬剤師が飽和する背景には、都市部への人口集中や医療のDX化が影響しています。まず、都市部への人口集中に伴い、薬剤師の数も増加しています。そこに加えて、都市部では多くの企業がDX化を進めており、業務効率化を図っています。結果として、少ない人員でも業務がこなせるようになり、薬剤師の需要が減少&余剰が生じているのです。
都道府県名 | 薬剤師偏在指標 | |
---|---|---|
1位 | 東京都 | 1.28 |
2位 | 神奈川県 | 1.12 |
3位 | 兵庫県 | 1.10 |
3位 | 福岡県 | 1.10 |
・・・ | ||
45位 | 富山県 | 0.80 |
46位 | 青森県 | 0.78 |
47位 | 福井県 | 0.74 |
※出典:現在時点における薬剤師偏在指標」|厚生労働省 ※「地域別薬剤師偏在指標」は、病院や薬局に勤務する薬剤師数を基に算出されており、ドラッグストアや企業で働く薬剤師の数は含まれていません。
このように、全国的には薬剤師が飽和している一方で地方では薬剤師が不足する「薬剤師の偏在」という問題が発生しています。では、こういった状況下で、薬剤師はどのようにキャリアを形成すればよいのでしょうか?
4. 薬剤師が飽和状態になってもキャリアアップ・年収アップを叶えるには?

薬剤師の数が飽和すると、「キャリアアップしにくい」、「年収が下がる」...といった希望を持てない状況が続く懸念があります。
そのため、今後はより戦略的にキャリアアップ・年収アップを図る必要が出てくるでしょう。管理職に就く、薬剤師資格を取る以外にも年収アップの戦略があります。
ここでは、薬剤師が飽和状態になってもキャリアアップ・年収アップを叶えるために必要なことを解説していきます。
4-1. ニーズの高いスキルを磨く
薬剤師が飽和状態になってもキャリアアップや年収アップを叶えるためには、ニーズの高いスキルを磨くことが重要です。
薬剤師が飽和しつつある昨今でも、スキルや専門的な知識を持つ"優秀な"薬剤師は職場を問わず求められています。薬剤師としての基本的なスキルに加え、+αの能力が求められる時代になっているのです。
とくに今後は「かかりつけ薬剤師」や「在宅医療」のニーズが高まると予想されています。国の政策として地域医療の拡充が推進されており、これらの分野での薬剤師の役割が重要視されているのです。
薬剤師が飽和状態にある現状でも、需要が高まるスキルを磨くことがキャリアアップの鍵となります。「かかりつけ薬剤師」や「在宅医療」といった新しいニーズに対応できる知識を幅広く身につけることで、今後のキャリアを有利に進められるでしょう。
かかりつけ薬剤師として働くために必要なスキルや資格のほか、メリット・デメリットなどについて知っておきましょう。
在宅薬剤師の役割や仕事内容、求められるスキルや経験について詳しく解説します。在宅薬剤師としての転職を検討している方は、ぜひご一読ください。
4-2. 地方での勤務も視野に入れる
キャリアアップや年収アップを実現するなら、地方での勤務も視野に入れるとよいでしょう。
人口密度が低下している地方部では薬剤師の需要が高いため、好条件の求人が見つかることがあります。都市部ではめったにない年収の就業先が見つかるなど、希望に沿った転職活動がしやすいです。
地方での勤務は、都市部の代替手段ではなく、都心部とは異なる経験を積む貴重な機会にもなります。地方では地域医療に力を入れている薬局やドラッグストアも多く、直接患者さまと触れ合いながら、在宅やかかりつけ薬剤師の経験を積むことができるでしょう。
薬剤師が飽和状態にある現状でも、勤務地を変えるだけでキャリアアップや年収アップを期待できます。
地方で働く薬剤師の年収の傾向や生活の違い、転職の際の重要なポイントについて詳しく解説します。
5. 薬剤師は飽和状態と思われがちだが需要が高い地方も視野に

都市部では薬剤師が飽和している一方で、地域によっては深刻な薬剤師不足が見られます。
とくに地方では薬剤師の需要が高く、好条件の求人数も多くあります。都市部とは異なる環境で働くことで、多様な経験を積み、スキルを広げるチャンスとなるでしょう。
年収アップやキャリアアップを目指している方は、無料でキャリア相談ができる「アポプラス薬剤師」にご相談ください。
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