1. そもそも薬剤師は単発派遣で働ける？

薬剤師の単発派遣とは、最短１日から働ける短期間限定の雇用形態を指します。１日だけの勤務や、長くても１～２カ月程度の短期間で働きます。

ただし、原則として労働者派遣法により日雇い派遣は禁止されています。禁止となった背景には、派遣会社や派遣先企業が一方的に解雇をするなど、ずさんな労働管理問題が起こったためです。

しかし、条件次第では単発の派遣で働くことができるため、自由なシフトで働きたい方や、短期間でしっかり稼ぎたい人には、選択肢の１つとして有効です。詳しい労働条件は、後ほど解説します。

参照：日雇派遣の原則禁止について｜厚生労働省

【常用型派遣との違い】

薬剤師の単発派遣と常用型派遣（長期派遣）は、雇用期間の長さに違いがあります。常用型派遣では、例えば数カ月から数年といった一定期間以上、同じ職場で働きます。そのため、本業として働く人がほとんどです。

2. 薬剤師が単発派遣で働く場合の条件

前述した通り、単発の派遣は労働者派遣法により禁止されていますが、以下の４つの例外のどれか１つに当てはまる場合は、勤務可能です。

• 60歳以上の人
• 学校教育法に基づく学校（専門学校や各種学校を含む）に通う学生または生徒（＊）
• 本業の年収が500万円以上ある人
• 主たる生計者ではなく、世帯年収が500万円以上の人

＊夜間学校、通信教育を受けている人は除外

言い換えると、学生や高齢者、本業がある人、または配偶者の年収が500万円以上の人は、単発派遣の薬剤師として働くことができます。

しかし、本業が公務員や管理薬剤師の場合、法律で副業が禁止されています。それ以外の薬剤師でも、職場の就業規則で副業が禁止されている場合があるため注意が必要です。単発薬剤師の仕事を始める前に、勤務先の就業規則を確認しておきましょう。

3. 主な勤務先・業務内容

単発派遣の薬剤師の主な勤務先は、調剤薬局や調剤併設のドラッグストアが中心です。主な業務は、医薬品の処方です。調剤業務の実務経験があれば、大抵の場合、難しい業務ではありません。

4. 薬剤師が単発派遣で働くメリット

薬剤師が派遣の単発で働くメリットには、主に以下の４つがあります。

• 時給相場が高い
• スケジュールの空きがあるときに働ける
• 人間関係での悩みが発生しにくい
• 複数の職場を経験できる

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

4-1. 時給相場が高い

薬剤師が派遣の単発で働くメリットの１つ目は、 時給相場が高いことです。薬剤師の単発派遣の時給相場は約3,000円程度と、パートの仕事に比べて高いことが多いです。

高く設定されている理由は、募集する側が、急遽薬剤師を確保したい状況にあるためです。例えば、正社員やパートの従業員が突然退職したり病気で休んだりする場合に、単発の薬剤師の募集が出ることがあります。

4-2. スケジュールの空きがあるときに働ける

薬剤師が派遣の単発で働くメリットの２つ目は、 スケジュールの空きがあるときに働けることです。例えば、平日はドラッグストアでパートとして働き、月に２回ほど単発派遣の仕事をするといった働き方が可能です。

また、転職活動中の空白期間を利用して勤務することもできます。単発での派遣薬剤師の勤務期間は、１日や数日といった短期間であるため、次の職場が見つかった場合にも、柔軟に職場を変えられるのです。

4-3. 人間関係での悩みが発生しにくい

薬剤師が派遣の単発で働くメリットの３つ目は、 人間関係での悩みが発生しにくいことです。単発派遣で働く場合、相性の悪い人が職場にいたとしても、数時間や数日だけのコミュニケーションで済むため、人間関係の悩みが生じるケースは少ないでしょう。

4-4. 複数の職場を経験できる

薬剤師が派遣の単発で働くメリットの４つ目は、複数の職場を経験できることです。単発派遣であれば、さまざまな職場で働く機会を得られます。複数の職場での仕事を通じて、患者さまや医療スタッフとのコミュニケーション方法、薬局ごとの運営方法などを経験することが可能です。そのため、薬剤師としての将来的なキャリアを決めるヒントになるでしょう。

5. 薬剤師が単発派遣で働くデメリット

薬剤師が派遣の単発で働くデメリットには、以下の４つがあります。

• 多忙な職場が多い
• 条件が合うケースは少ない
• キャリアとは認められないことが多い
• 収入が安定しにくい

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

5-1. 多忙な職場が多い

単発派遣薬剤師の職場は、繁忙期による人手不足や突発的な欠員をカバーするなど、人材が不足している状況であることが多いです。

そのため、派遣される職場は、通常よりも業務量が多く、忙しい可能性があり、プレッシャーやストレスが発生することもあるでしょう。

5-2. 条件が合うケースは少ない

希望する条件に合う職場が見つかりにくいのも単発派遣で働くときのデメリットです。単発派遣の求人で、希望する日時や勤務期間にぴったり合うものを見つけるのは容易ではありません。

そもそも求人数が少なく、勤務条件が非常に限定的であるため、自分のスケジュールにあわせて働きたいと思っても、希望に合った求人が見つからないこともあるでしょう。

5-3. キャリアとは認められないことが多い

単発派遣で働くデメリットには、キャリアとして認められにくいという点もあります。単発の仕事は、短期間で多様な経験を積めるというメリットがある一方で、長期的なキャリアは構築できません。

将来的に転職するときにも、単発派遣の経験だけをキャリアとしてアピールするのは難しい可能性があります。単発派遣で得られる経験をどのように自身の専門性やキャリアパスに結びつけていくかが重要です。

5-4. 収入が安定しにくい

単発派遣で薬剤師として働く場合、収入が安定しにくいこともデメリットです。単発派遣という働き方の特性上、常に仕事があるわけではないため、正社員と比べると収入が不安定になりがちです。

とくに、単発派遣の仕事はその仕事が終了するか、特定の期間が過ぎれば次の仕事を探さなければならず、その間収入が途絶える可能性があります。そして、職場や勤務条件、時給は仕事によって異なるため、収入の見込みが立たないことも珍しくありません。

また、派遣社員は正社員と比べて福利厚生が充実していない場合が多く、健康保険や雇用保険、退職金制度などの恩恵を受けにくい雇用形態です。

そのため、薬剤師としてキャリアを積みながら経済的にも安定したい人にとっては、大きなデメリットといえます。

6. 薬剤師の単発派遣に向いている人

薬剤師の単発派遣が適している人には、次のような特徴があります。

• 高い報酬で短期間仕事をしたい
• 自分の時間を効率的に使いたい

薬剤師の単発派遣は、１日や数週間の短期間の勤務で高い報酬が得られる働き方です。仕事が比較的忙しくても、短期間で効率よく収入を得たい人には最適な選択肢といえます。また、土日や祝日など、自分の空いている時間で効率的に働きたい人にも向いています。

7. 薬剤師の単発派遣に向いていない人

単発派遣が合わない人の特徴には、以下が挙げられます。

• 調剤の実務経験がない
• 人間関係の構築を大切にしたい
• 長期間、同じ場所で働きたい

単発派遣は、人手不足の職場に勤務することが多いため、すぐに業務に対応できる実務経験のある人材を求める傾向があります。医薬品の処方業務が中心となるため、調剤業務の経験は、基本スキルとして求められます。

加えて、単発派遣の場合、勤務期間が短いことからじっくりと人間関係を築くことは難しいでしょう。また、短期間での勤務が基本となるため、固定の場所で働きたい方にも不向きです。

8. 薬剤師の専門エージェントに登録して自分に合った働き方を探そう

薬剤師の単発派遣は最短１日から可能な短期雇用で、特定の条件に当てはまる場合に勤務可能です。高時給で働けるため、短期間で効率よく稼ぎたい人に向く働き方です。一方、多忙な職場となりやすく、キャリア形成や収入の安定性は見込めないというデメリットも見逃せません。そのため、単発派遣だけではなく、派遣やパートなどさまざまな働き方を探ってみるのがおすすめと言えるでしょう。

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