キャリアアップしたい薬剤師必見!年収アップに効果的な認定・専門薬剤師資格9選【取得難易度&ダブルライセンス完全ガイド】
更新日:
「なぜ薬剤師は資格をとった方がいいと言われるのだろう」「忙しい業務の中で資格取得のための時間がなかなか取れない」「資格を取っても活かせる場がないのでは?」とお悩みの薬剤師の方は多いのではないでしょうか。薬剤師の認定資格取得は、成長や昇格、キャリアアップを目指していくうえで重要です。
この記事では、薬剤師・薬局経営コンサルタントである下田 篤男氏が、自身の経験と数多くの薬剤師のキャリア支援から得た知見をもとに、資格取得の具体的メリットを解説します。加えて、おすすめの認定資格やダブルライセンスの種類、取得難易度、キャリアへの影響も紹介していますので、あなたの目標や強みに合った資格選びのヒントになるでしょう。
記事を読み終える頃には、専門性を武器に医療チームでの存在感を高め、患者さまから信頼され、年収アップも実現する道筋が見えてくるはずです。あなたの薬剤師人生を変える第一歩を踏み出してみませんか?
この記事でわかること
- おすすめの認定薬剤師資格・専門薬剤師資格
- 薬剤師のおすすめダブルライセンス
- 勤務先別のおすすめ資格
目次
キャリアアップしたい薬剤師必見!年収アップに効果的な認定・専門薬剤師資格9選【取得難易度&ダブルライセンス完全ガイド】
- 2. 現場で活かせる!薬剤師におすすめの認定資格6選(難易度表付き)
- 2-1. 研修認定薬剤師
- 2-2. がん薬物療法認定薬剤師
- 2-3. 在宅療養支援認定薬剤師
- 2-4. 緩和薬物療法認定薬剤師
- 2-5. 感染制御認定薬剤師
- 2-6. 漢方薬・生薬認定薬剤師
- 2-7. 薬剤師認定資格の難易度比較一覧
- 3. 専門性で差をつける!薬剤師に人気の専門資格3選(難易度表付き)
- 3-1. 妊婦・授乳婦専門薬剤師
- 3-2. 精神科専門薬剤師
- 3-3. 感染制御専門薬剤師
- 3-4. 専門薬剤師資格の難易度比較一覧
1. どうして薬剤師に資格取得が必要?年収&キャリアへの影響を解説
薬剤師にとって、資格取得は非常に重要です。資格の有無は、業務内容や収入にまでも影響を及ぼします。専門性の高い資格は、業務の幅を広げるだけでなく、専門性が評価されることによる収入アップも見込めるでしょう。また、資格があれば、資格を持たない薬剤師との差別化を図れるため、転職市場でも有利に働きます。
薬剤師の職務に関する資格には、大きくわけて「認定薬剤師」と「専門薬剤師」の2つがあります。これらは国家資格である薬剤師免許とは異なり、民間の資格です。資格制度のある主な領域には「がん」「精神科」「HIV感染症」「感染制御」「妊婦・授乳婦」の5つがあります。それぞれに、「認定薬剤師」と「専門薬剤師」の資格が設定されており、「専門薬剤師」の資格取得には「認定薬剤師」の資格取得が必要です。
この5つの領域以外にも、さまざまな分野で「認定薬剤師」・「専門薬剤師」の資格があるため、自分のキャリアプランに沿った資格取得を目指すことが大切です。
2. 現場で活かせる!薬剤師におすすめの認定資格6選(難易度表付き)
認定薬剤師には多様な種類があるため、どれを取得すべきか悩むこともあるでしょう。多くの薬剤師のキャリア支援に携わってきた経験から、市場価値と将来性、取得難易度のバランスを考慮して、特におすすめの認定薬剤師資格を6つ厳選しました。
- 研修認定薬剤師:最も基本的な認定資格で取得しやすく、他の専門資格への足がかりになる
- がん薬物療法認定薬剤師:がん患者増加に伴い需要が高く、専門性が評価され就職・転職で有利
- 在宅療養支援認定薬剤師:高齢化社会で需要急増中の分野であり、地域医療での活躍の場が広がる
- 緩和薬物療法認定薬剤師:終末期医療や慢性疼痛管理など、患者QOL向上に直結する
- 感染制御認定薬剤師:耐性菌対策や感染症予防など、医療安全に不可欠で社会的ニーズが高い
- 漢方薬・生薬認定薬剤師:統合医療への関心高まりにより需要増加中で、一般薬剤師との差別化ができる
それぞれについて、詳しく解説していきます。
2-1.研修認定薬剤師
| 活躍できる場所 | 病院、薬局、研究施設、教育機関 |
|---|---|
| 取得のメリット |
|
参考:研修認定薬剤師制度とは|公益財団法人 日本薬剤師研修センター
「研修認定薬剤師」は、一定期間内に特定の単位を取得したことの証明となる資格です。比較的チャレンジしやすい資格で、あらゆる業種で働く薬剤師におすすめの資格といえます。認定を受けるためには、対象の研修を4年以内に受講し、40単位以上(かつ各年5単位以上)を取得しなければなりません。
研修内容は、基礎薬学・医療薬学・衛生薬学・薬事関連法規など、幅広い分野に及びます。「研修認定薬剤師」の資格を取得すれば、昇進やかかりつけ薬剤師として活躍が可能になるでしょう。
より質の高い知識を習得している証明として、1994年から「認定薬剤師」の制度がスタートしました。ここでは、キャリアアップにつながる認定薬剤師のメリットなどについてご紹介します。
2-2.がん薬物療法認定薬剤師
| 活躍できる場所 | がん治療を行う病院、がんセンター、クリニック |
|---|---|
| 取得のメリット |
|
「がん薬物療法認定薬剤師」は、がん医療における薬物療法の専門知識に関する認定資格です。医師や看護師と連携し、最適な薬物療法の提案や助言を行うため、チーム医療において重要な役割を果たします。また、患者さまご本人やご家族の方に薬物療法の説明や指導を行い、治療へのアドヒアランス向上を図ることも業務のひとつです。
「がん薬物療法認定薬剤師」の認定試験を受けるには、「薬剤師としての実務経験が3年以上ある」、「日本病院薬剤師会が定める実技研修を受ける」など、複数の要件を満たさなければなりません。専門性の高いがん薬物療法認定薬剤師を取得すれば、医療従事者や患者さまからの信頼が高まるでしょう。
近年は薬物療法が主流となりました。とはいえ、抗がん薬の選択や副作用への対策など、複雑な治療管理が必要となります。
そのため、がん薬物療法の高い知識と技術を有する「がん専門薬剤師」の需要が高まっています。
2-3.在宅療養支援認定薬剤師
| 活躍できる場所 | 在宅医療を提供する薬局、病院、訪問診療クリニック |
|---|---|
| 取得のメリット |
|
「在宅療養支援認定薬剤師」は、在宅医療を必要とする患者さまに適切な医療・介護を提供するための、専門的な知識やスキルを持っていることを認定する資格です。患者さま一人ひとりに合わせた服薬指導や残薬管理などを行います。
近年は、病院ではなく、自宅や施設など住み慣れた場所で医療を受けるケースが増えています。そのような在宅医療のニーズに応えるために必要な知識・技術・姿勢を身につけ、質の高い医療を提供するのが、在宅療養支援認定薬剤師の役割です。取得するには、「薬剤師として3年以上の実務経験」、「在宅業務の実践による5事例の報告の提出」など、複数の要件を満たす必要があります。
日々進化する在宅医療の現場で、薬剤師は具体的にどのような業務を担い、どういったスキルを求められているかよくわからない人もいるでしょう。そこで今回は、在宅医療での薬剤師の役割、業務内容、必要なスキルや資格について解説します。
2-4.緩和薬物療法認定薬剤師
| 活躍できる場所 | ホスピス、緩和ケア病棟、総合病院 |
|---|---|
| 取得のメリット |
|
「緩和薬物療法認定薬剤師」は、がん治療の緩和ケアに関する専門知識と技能を持っている薬剤師であると証明する資格です。がん治療における緩和ケアでは、薬の選び方と服薬方法が非常に重要で、高度な技術や深い知識が求められます。
緩和薬物療法認定薬剤師は、患者さま一人ひとりの症状や状態に合わせて、副作用を最小限に抑えながら、効果的な服薬方法を設計します。さらに、患者さまへの適切な服薬指導も重要な役割です。
「緩和薬物療法認定薬剤師」を取得するには、「緩和医療に3年以上従事する」、「緩和医療領域の薬剤管理指導実績30症例以上を提示」など、複数の要件があります。資格を取得することで、緩和ケアの領域で専門性が高いことの証明となり、ホスピスや緩和ケア病棟の病院薬剤師として活躍できるでしょう。
2002年の診療報酬改定により、緩和ケア診療加算が新設され、多くの施設で緩和ケアチームが活動するようになっています。
緩和ケアチームは、医師・薬剤師・看護師などがチームを組みますが、薬剤師はどのように関わっていくべきか、情報をまとめました。
2-5.感染制御認定薬剤師
| 活躍できる場所 | 病院(特に感染症科、感染制御部門) |
|---|---|
| 取得のメリット |
|
参考:感染制御専門薬剤師部門|一般社団法人 日本病院薬剤師会
「感染制御認定薬剤師」は、感染症治療・予防領域において、適切かつ安全な薬物療法を行える知識と技術を持つ薬剤師であると証明する資格です。医療現場では、感染対策チームの一員として他の医療系職種と連携し、感染対策の提案や感染対策マニュアルの作成といった業務を担います。
感染制御認定薬剤師の資格を取得するためには、「薬剤師の実務経験3年以上」、「病院や診療所に勤務し、院内感染対策チームに3年以上所属」など、複数の要件をすべて満たす必要があります。感染制御認定薬剤師の資格を取得すれば、病院内の感染対策チームの一員として活躍でき、院内感染の防止対策に貢献できるでしょう。
2-6.漢方薬・生薬認定薬剤師
| 活躍できる場所 | 漢方薬を取り扱う薬局、病院、クリニック |
|---|---|
| 取得のメリット |
|
参考:漢方薬・生薬認定薬剤師制度とは|公益財団法人 日本薬剤師研修センター
「漢方薬・生薬認定薬剤師」は、漢方薬や生薬に関して高度な専門性と適性を持っている薬剤師であると証明する資格です。服薬指導や服薬管理、患者さまや医師への情報提供が可能になります。セルフメディケーションの一環として、漢方薬も注目を集めているため、漢方薬の専門知識があれば、薬剤師としての付加価値も高まるでしょう。
資格を取得するには、日本生薬学会および日本薬剤師研修センターの実施する特定の研修会を取得し、薬用植物園実習を受け、資格試験に合格する必要があります。「漢方薬・生薬認定薬剤師」の資格を取得すれば、漢方薬専門の薬局への転職が有利になるでしょう。また、専門分野を持つ薬剤師として、医師をはじめとする医療従事者からの信頼が高まるはずです。
漢方薬の専門家の需要が高まっており、漢方薬に特化した「漢方薬剤師」を目指す薬剤師も増えています。そこで、漢方薬剤師になるメリットや、「漢方薬・生薬認定薬剤師」の認定を取得する方法などについてご紹介します。
2-7.薬剤師認定資格の難易度比較一覧
以下の資格一覧表で、それぞれの取得難易度を比較しています。認定資格を選ぶ際の参考にしてみてください。
| 資格名 | 難易度 | 取得期間 | 主な難関ポイント |
| 研修認定薬剤師 | ★★☆☆☆ | 約1〜4年 | 40単位以上の取得が必要 |
| がん薬物療法認定薬剤師 | ★★★★☆ | 約3〜5年 | 実務経験、症例報告、試験の合格が必要 |
| 在宅療養支援認定薬剤師 | ★★★☆☆ | 約3年 | 在宅業務経験と症例報告が必要 |
| 緩和薬物療法認定薬剤師 | ★★★★☆ | 約3〜5年 | 緩和医療の実務経験と症例提出が必要 |
| 感染制御認定薬剤師 | ★★★★☆ | 約3〜5年 | 感染対策チームでの経験と試験合格が必要 |
| 漢方薬・生薬認定薬剤師 | ★★★☆☆ | 約2〜3年 | 実習、研修会参加、試験合格が必要 |
難易度は個人の経験や環境によって変わりますが、一般的に専門薬剤師は認定薬剤師より難易度が高くなります。また、がん領域や感染制御領域は専門性が高く、取得難易度も高い傾向にあります。
3.専門性で差をつける!薬剤師に人気の専門資格3選(難易度表付き)
特定の分野で専門性を高め、その分野のプロフェッショナルとして活躍したい人には、専門薬剤師の資格取得が向いています。専門薬剤師は認定薬剤師より取得難易度が高い一方で、医療チームにおける発言力や処遇面でも大きな差があります。医療の高度化に伴い、特に以下3つの専門薬剤師資格は、市場価値と将来性の両面から特におすすめです。
- 「妊婦・授乳婦専門薬剤師」:妊娠・授乳期の特殊な薬物療法に対応できるスペシャリストとして社会的ニーズが高まっている
- 「精神科専門薬剤師」:精神疾患患者の増加により、複雑な向精神薬治療を適切に管理できる専門家の需要が急増している
- 「感染制御専門薬剤師」:耐性菌問題や感染症対策の重要性から、高度な知識を持つ感染症薬物療法のエキスパートが医療現場で強く求められている
それぞれの資格について、詳しく解説します。
3-1.妊婦・授乳婦専門薬剤師
| 活躍できる場所 | 産婦人科、一般の病院や薬局、妊婦や授乳婦の健康相談を行う施設 |
|---|---|
| 取得のメリット | 妊娠中や授乳期の女性に対する専門的な薬物療法の知識を習得できる |
参考:妊婦・授乳婦専門薬剤師部門|一般社団法人 日本病院薬剤師会
「妊婦・授乳婦専門薬剤師」は、妊娠中や授乳中の女性に対する薬物療法に関して、高度な知識と熟練した技術を持つ薬剤師に与えられる資格です。この資格があれば、妊婦や授乳中の女性が安心して医療を受けられるようにサポートできます。
具体的には、胎児や乳児に影響を及ぼさないよう配慮した薬物治療の提案や実践などが挙げられます。疾患を持つ妊婦や母親に対して、適切な薬物療法を行うことも、妊婦・授乳婦専門薬剤師の重要な役割です。取得するためには、「妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師」を先に取得する必要があります。
3-2.精神科専門薬剤師
| 活躍できる場所 | 精神科病院、精神科クリニック、総合病院の精神科部門 |
|---|---|
| 取得のメリット |
|
「精神科専門薬剤師」は、精神科治療における薬物療法に関する深い知識と高度な技術を有することを証明する資格です。医師や看護師と連携し、患者さまの快適な生活や社会復帰をサポートする役割を担います。精神科専門薬剤師になるためには、「精神科薬物療法認定薬剤師」の資格を取得していなければなりません。
3-3.感染制御専門薬剤師
| 活躍できる場所 | 病院の感染症科、感染制御部門、公衆衛生関連の施設 |
|---|---|
| 取得のメリット |
|
参考:感染制御専門薬剤師部門|一般社団法人 日本病院薬剤師会
感染制御専門薬剤師は、感染症の知識や感染制御に関するスキルを十分に備えている薬剤師に認められる資格です。主な業務は、患者さまが安心して医療を受けられるよう、感染リスクの低い環境を整えることです。
感染症に罹患した患者さまには、薬物療法を通じて回復をサポートし、感染リスクがある患者さまには、感染制御のための適切な対処をします。また、感染制御に関する知識を医療従事者に提供することも業務の一部です。感染制御専門薬剤師になるためには、まずは「感染制御認定薬剤師」を取得し、実務経験を積んでから、試験を受ける必要があります。
3-4.専門薬剤師資格の難易度比較一覧
以下の資格一覧表で各資格の難易度を比較しました。専門薬剤師資格を選ぶ際の参考にしてみてください。
| 資格名 | 難易度 | 取得期間 | 主な難関ポイント |
| 妊婦・授乳婦専門薬剤師 | ★★★★★ | 約3年〜 | 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師の取得が必要 学会発表等の実績も必要 |
| 精神科専門薬剤師 | ★★★★★ | 約3年〜 | 精神科薬物療法認定薬剤師の取得が必要 学会発表等の実績も必要 |
| 感染制御専門薬剤師 | ★★★★★ | 約3年〜 | 感染制御認定薬剤師の取得が必要 学会発表等の実績も必要 |
いずれの資格も、前段階として認定薬剤師資格の取得が必要です。加えて、学会発表の実績も必要となるため、取得ハードルはかなり高いといえるでしょう。

- 下田コメント
薬剤師として補足すると、認定・専門資格は単なる肩書きではなく実務に直結します。取得には日々の研修参加や症例蓄積が重要で、勤務先の理解も必須です。自分のキャリアビジョンに合った資格を選び、計画的に取り組むことをおすすめします。
4.職場別で選ぶ!薬局・病院薬剤師におすすめの資格
働く環境によって、取得すべき認定資格は異なります。資格手当のインセンティブがある職場もあるため、勤務先の特徴を考えながら取得する資格を選択するのがよいでしょう。以下におすすめの認定資格を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
4-1.薬局薬剤師におすすめの認定資格
- 研修認定薬剤師:かかりつけ薬剤師としての活動基盤となる
- 在宅療養支援認定薬剤師:地域医療における在宅ケアで重要な役割を果たせる
- 漢方薬・生薬認定薬剤師:OTCや漢方相談に強い薬剤師として差別化できる
- 糖尿病療養指導士:生活習慣病患者の多い薬局での指導に役立つ
4-2.病院薬剤師におすすめの認定資格
- がん薬物療法認定薬剤師/専門薬剤師:がん治療のチーム医療で重要な役割を担える
- 感染制御認定薬剤師/専門薬剤師:院内感染対策チームの中核メンバーとして活躍できる
- 精神科専門薬剤師:精神科病院での専門的なケアが提供できる
- 妊婦・授乳婦専門薬剤師:周産期医療において母子の薬物療法の安全性を確保できる
- NST(栄養サポートチーム)専門療法士:栄養管理の観点から薬物療法を支援できる
- 緩和薬物療法認定薬剤師:緩和ケアチームの一員として患者のQOL向上に貢献できる
- 救急認定薬剤師:救急医療の現場での迅速かつ適切な薬物療法をサポートできる
5. 薬剤師の可能性が広がる!おすすめのダブルライセンス4選
薬剤師免許と組み合わせることで、キャリアの幅を大きく広げ、より専門性の高い医療人材として活躍できるダブルライセンスを紹介します。
5-1.医師
薬学的知識と医学的知識の両方を備えることで、包括的な医療判断が可能になります。薬剤の作用機序を深く理解した医師として、理想的なチーム医療の実現に貢献できます。
5-2.管理栄養士
病院では栄養サポートチーム(NST)の中核メンバーとして、薬物療法と栄養管理の両面から患者をサポートできます。薬局では、食事指導と服薬指導を一体化させた総合的な健康サポートが提供可能です。
5-3.看護師
薬物療法の専門知識と臨床現場での実践的なケアスキルを兼ね備えた希少な人材になれます。特にがん化学療法や感染管理の分野で、薬学知識を活かした高度な看護実践が期待できるでしょう。
5-4.臨床心理士
精神科領域では、薬物治療と心理的アプローチを組み合わせた総合的なケアが可能です。薬の効果や副作用を深く理解したうえでの心理サポートは、メンタルヘルス領域で大きな価値を発揮します。

- 下田コメント
ダブルライセンスは理想的ですが、実現には膨大な時間と費用が必要です。まずは薬剤師として専門性を確立し、他職種と協働する力を磨くことが現実的でしょう。
6.+αで差別化を図る!薬剤師が取るべき専門資格とキャリア活用法
薬剤師としての基本的なスキルに加え、特定分野の専門性を高める資格を取得すれば、キャリアの可能性が大きく広がります。以下に、薬剤師の価値をさらに高める専門資格を紹介します。
6-1.医薬品情報専門薬剤師(DI専門薬剤師)
医薬品情報を科学的に評価・分析し、医療現場に最適な情報を提供する専門家です。病院DI部門や製薬会社学術部門で重宝され、医薬品の適正使用推進において中心的役割を担います。
6-2.認定実務実習指導薬剤師
薬学生の実務実習指導者として認定される資格です。教育スキルが身につき、薬局や病院での教育担当者や管理職への登用機会が増えます。次世代薬剤師育成に貢献しながら自身のキャリアアップにつながるでしょう。
6-3.骨粗鬆症マネージャー
骨粗鬆症の予防・治療に特化した資格です。運動指導や栄養指導も含めた包括的アプローチができ、骨折リスク評価や服薬指導の質向上により患者のQOL改善に貢献できます。
6-4.フィジカルアセスメント認定薬剤師
患者の身体状態を評価するスキルを持つ薬剤師として認定される資格です。バイタルサイン測定や身体観察を通じて、薬物療法の効果や副作用をより正確に評価し、在宅医療や地域包括ケアで重要な役割を担えます。

- 下田コメント
薬剤師のキャリア発展には専門性が鍵です。これらの資格は臨床現場で直接活かせる実践的スキルを証明できます。取得には時間がかかりますが、日々の業務で意識して経験を積みながら計画的に挑戦すれば、自分だけの強みを持つ薬剤師として成長できるでしょう。
7.認定・専門薬剤師の資格取得方法完全ガイド【手順・条件・期限】
ここでは、認定薬剤師と専門薬剤師の資格を取得する方法を解説します。
7-1.認定薬剤師の取得方法
認定薬剤師を取得するには、以下の3ステップで進めます。
- STEP1薬剤師研修・認定電子システム(PECS)の登録をする
- STEP2研修を受ける
- STEP3認定の申請をする
それぞれについて、詳しく解説していきます。
7-1-1.STEP1薬剤師研修・認定電子システム(PECS)の登録をする
認定薬剤師を取得するには、まず、日本薬剤師研修センターの薬剤師研修・認定電子システム(PECS)の登録を行います。認定に必要な単位などはPECSで管理され、システムを通じて認定申請も可能です。令和3年までは、薬剤師研修手帳に研修受講シールを貼り付けて単位数を管理していました。現在では、薬剤師研修手帳の配布は終了し、PECSのシステム上で管理する方式に移行しています。
7-1-2. STEP2研修を受ける
PECSの登録を済ませたのち、認定団体の定める研修に参加します。研修の種類には、以下の8つがあります。
- 集合研修(座学/実習)
- 学術集会
- e-ラーニング研修
- Web利用研修(集合研修即時配信)
- Web利用研修(学術集会)
- 自己研修
- 学術集会等発表
- 学術雑誌論文掲載
取得を希望する認定薬剤師によって必須となる研修は異なり、取得単位は年間の上限取得数や有効期限が設けられていることもあります。どの研修に参加するかは、取得目標となる認定薬剤師の要件を確認したうえで、計画的に進めましょう。
7-1-3. STEP3認定の申請をする
研修単位やその他必要な条件を満たしたあとは、認定の申請を行います。PECSから認定を申請し、必要書類を日本薬剤師研修センターに送付し、審査を受けます。審査を通過して認定薬剤師に登録されると、「認定薬剤師証」が発行されます。
また、認定薬剤師の場合、認定期間が3年と定められているため、保持し続けるには3年に1回の更新手続きは欠かせません。なお、更新時には研修に参加して一定の単位を取得する必要があります。
7-2. 専門薬剤師の取得方法
専門薬剤師の取得方法は、以下の2ステップで進みます。
- STEP1各専門薬剤師の要件を満たす
- STEP2資格試験に合格する
それぞれのステップについても、詳しく解説していきます。
7-2-1. STEP1各専門薬剤師の要件を満たす
専門薬剤師になるには、まずそれぞれの専門薬剤師受験の要件を満たさなければなりません。要件には、特定の専門分野に関連する研修や講座の受講、認定薬剤師資格の取得があります。たとえば、がん専門薬剤師では、以下11項目の要件を満たして初めて試験を受けられます。
- (1)日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えている
- (2)薬剤師としての実務経験を5年以上有する
- (3)申請時において、一般社団法人日本医療薬学会本学会の会員である
- (4)「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」、「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」、「日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」のいずれかの認定を受けている
- (5)本学会が認定する「がん専門薬剤師研修施設」において、本学会の定めた研修ガイドラインに従って、がん薬物療法に関する5年以上の研修歴を有する
- (6)細則「別表」で定めるクレジットを5年で50単位以上取得している
- (7) がん専門薬剤師集中教育講座に1回以上参加した
- (8)本学会の年会に1回以上参加した
- (9)自ら実施した5年のがん患者への薬学的介入を伴った症例報告50症例(3領域以上のがん種)を提出する
-
(10)以下の研究活動のうち、発表あるいは論文の条件のどちらか一方を満たす
- ・学会発表
- 医療薬学に関する全国学会、国際学会あるいは別に定める地区大会での発表が2回以上ある
本学会が主催する年会において本人が筆頭発表者となった発表を含んでいる - ・論文
- 本人が筆頭著者である医療薬学に関する学術論文を1報以上有する
学術論文は、国際的あるいは全国的学会誌・学術雑誌に複数査読制による審査を経て掲載された医療薬学に関する学術論文あるいは症例報告であること(編集委員以外の複数の専門家による査読を経ていない論文や商業誌の掲載論文は本条の対象外)
- (11)本学会が実施するがん専門薬剤師認定試験に合格する
出典:一般社団法人日本医療薬学会がん専門薬剤師認定制度規程|日本医療薬学会
専門薬剤師になるための研修は、専門知識と技能を向上させるためのもので、研修の単位や時間数が定められていることが一般的です。一部の専門薬剤師の資格では、その分野に関連する論文の提出が求められることもあります。求められる論文は、専門知識や研究能力を有することの証明として重要視され、実践的な経験や研究結果を基にしたものです。
7-2-2. STEP2資格試験に合格する
専門薬剤師になるための所定の要件を満たしたあとは、資格試験を受けます。資格試験は、その専門分野における知識と技能を評価するためのもので、筆記試験や実技試験が行われます。試験に合格すると、専門薬剤師の資格を取得できます。
なお、専門薬剤師にも認定期間が定められており、保持し続けるには5年ごとに更新する必要があります。更新にも、単位の取得や症例の報告が求められるため、各専門薬剤師の更新要項をよく確認しておきましょう。
8.認定薬剤師&専門薬剤師資格についてよくある質問
以下で、認定薬剤師と専門薬剤師資格でよくある質問に回答します。
認定薬剤師資格を活かせる職場・働き方は?
認定薬剤師資格は、病院薬剤部だけでなく特定領域に特化した調剤薬局でも活かせます。また、地域支援体制加算の算定やかかりつけ薬剤師など、認定薬剤師資格を持つ薬剤師にしか認められない業務や算定要件も少なくありません。認定薬剤師の資格を取得すれば、キャリアの幅が広がるでしょう。
認定資格を取得するとどのくらい給料がアップする?
多くの医療機関や薬局では、認定資格や専門資格に対して月額数千円から2万円程度の資格手当を支給しています。さらに、専門性を活かした転職や組織内での昇進により、年収ベースで数十万円のアップが見込める場合もあるでしょう。資格取得は経済面でもキャリアアップの重要な一歩となります。
9.薬剤師は資格を取ってキャリアアップを目指そう
資格の取得は、薬剤師として十分な知識があることや研鑽を積んでいることの証明となり、転職市場では他の候補者との間で差別化を図れます。どの資格も専門性を高めつつ、キャリアアップにつながります。また、ダブルライセンスのおすすめや、プラスアルファで取得しておきたい資格もあるため、自分の目指す方向性に合わせて検討してみてください。
「アポプラス薬剤師」では、専任コンサルタントがあなたのキャリアプランに合わせた資格や、最適な職場を見つけるためのアドバイスを行っています。キャリアに悩んだり、資格取得のための転職を検討したりしているときには、ぜひ一度ご相談ください。あなたのキャリアアップへの第一歩を、私たちと共に踏み出しましょう。
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監修者

薬剤師・薬局経営コンサルタント 下田 篤男
京都大学薬学部総合薬学科卒業。 卒業後は調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務。 総合病院門前などで管理薬剤師として経験を積んだのち、マネージメント業務にも携わる。現在は薬剤師として働く傍ら、医療記事の執筆、編集や薬局経営コンサルタントとしても活動している。
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