リフィル処方箋とは?メリット・デメリットと薬剤師への影響を解説
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近年、医療業務の効率化として注目されているのがリフィル処方箋です。調剤業務を担う薬剤師にとって、リフィル処方箋の理解は欠かせません。
そこで今回は、リフィル処方箋とは何か、メリットとデメリットと薬剤師にどのように影響を及ぼすのかについて、詳しく解説します。新たな制度の詳しい情報を得て、日々の薬剤師としての業務に役立てましょう。
目次
リフィル処方箋とは?メリット・デメリットと薬剤師への影響を解説
1. リフィル処方箋の基礎知識
そもそもリフィル処方箋についてよく分からないという薬剤師もいるでしょう。ここでは、以下5つの項目に分けて、リフィル処方箋の基礎知識を解説します。
- ・リフィル処方箋とは
- ・分割調剤との違い
- ・対象となる薬品
- ・処方箋を利用できる回数
- ・処方箋を利用できる期間
1-1. リフィル処方箋とは
リフィル処方箋とは、一定の期間内に反復使用できる処方箋のことです。リフィル処方箋のリフィル(refill)には、補充や詰め替えという意味があります。薬局にリフィル処方箋を提示するだけで、医師の再診を受けることなくお薬を受け取ることが可能になる制度です。
従来の日本の法律では、処方箋を持たずに来局した患者様から「病院の診察を受けられない。いつも飲んでいる薬を処方してほしい」という要望があったとしても、薬剤師はお薬を出すことができませんでした。いかなる場合でも、医師の診察を受けてから処方箋を薬局に提出して、お薬を処方してもらう必要があったのです。
この従来の調剤の流れが、「リフィル処方箋」によって変わりました。日本では2022年度の診療報酬改定から導入されました。先立って導入されていた諸外国と同様に、利用できるようになったのです。
1-2. 分割調剤との違い
リフィル処方箋と混同しやすいものに、分割調剤があります。分割調剤とは、患者様が医療機関で処方箋を受け取ったときに、薬剤師がその処方箋をもとに、一定期間ごとにお薬を分けて調剤する制度のことです。
分割調剤とリフィル処方箋は、いずれも患者様がお薬を一度に多量に持つことなく、必要な分だけ順次受け取れるという点では似ていますが、運用方法と目的に違いがあります。
分割調剤は、一度に大量の薬を処方する代わりに処方箋の薬をいくつかに分けて、段階的に調剤する方法です。これにより、お薬の使い方をしっかりと理解し、適切な服用を促すことができます。また、お薬の副作用が出た場合にはすぐに対応できるというメリットもあります。
なお、分割調剤では、以下のような場面で使用することが可能です。
- ・保存が困難なお薬を使用する場合
- ・ジェネリック薬(後発医薬品)をはじめて使用する場合
- ・医師からの指示がある場合
また、分割調剤は薬剤師のサポートが必要だと医師が判断した場合に用いられ、一度に最大3回までの分割が可能です。
一方で、リフィル処方箋は、継続的な治療が必要な患者様に対して、あらかじめ長期間の投薬を一度に処方し、その処方箋を基に薬局で数回に分けてお薬を受け取ることができる仕組みです。
リフィル処方箋の制度の目的は、特に慢性病の患者様がお薬を定期的に取得しやすくすることと、医療機関への通院回数を減らすことにあります。
1-3. 対象となる薬品
リフィル処方箋の対象となる薬品については明確な決まりはありませんが、主に、慢性疾患に対する長期間服用が必要な薬品です。発売1年未満の新薬・向精神薬・麻薬・湿布など、投与量が制限されている薬品は、リフィル処方箋の対象外です。
また、その他の薬品についてリフィル処方箋で処方されるか否かは、医師の判断に委ねられます。
1-4. リフィル処方箋を利用できる回数
リフィル処方箋を使用できる回数には制限があり、最大で3回までと定められています。医師が、その患者様がリフィル処方箋を利用することを適切と判断した場合、専用の処方箋フォーマットの「リフィル可」欄に印がつけられ、使用可能な回数が「2回」または「3回」と明記されます。
1-5. リフィル処方箋を利用できる期間
リフィル処方箋に基づく1回あたりの投薬期間および全体の投薬期間は、患者様の病状等を考慮して医師が判断します。リフィル処方箋の初回調剤に関する有効期限は、通常の処方箋と同じです。
しかし、2回目以降の調剤については、基本的には前回の調剤日から投薬期間が終了する日を次回の調剤予定日とし、その日の前後7日以内に調剤を行う必要があります。
2. リフィル処方箋の日本と海外の現状
リフィル処方箋は、実際にはどの程度利用されているのでしょうか。現状は日本と海外で異なります。ここでは、リフィル処方箋の日本と海外の現状をそれぞれ解説します。
2-1. 日本の現状
2022年6月の日本保険薬局協会の調査報告書によれば 、リフィル処方箋の利用状況は、全11,882薬局中、リフィル処方箋を取り扱った薬局は2,087件で、全体の17.6%にあたります。従来の処方箋の受付回数と比べてみると、全体の受付回数に対するリフィル処方箋の割合はわずか0.053%で、従来の処方箋が主流だということがわかります。
理由としては、まだリフィル処方箋を取り扱っていない医療施設が存在したり、病状の観察が必要な患者様が多かったりといった事情が挙げられます。しかし、リフィル処方箋の制度はまだ導入されたばかりであるため、これからの広がりが期待されます。
参考:リフィル処方箋応需に関する調査報告書|日本保険薬局協会
2-2. 海外の現状
アメリカ・イギリス・フランス・オーストラリアなどの海外諸国では、既にリフィル処方箋が導入・実施されています。アメリカでは1951年からリフィル制度が始まっており、上記4カ国の中では最も長い実績があります。
特定の対象制限は設けられていませんが、一般的には2年を超える処方が不可能となっているようです。また、アメリカでは州によって規則が異なり、例えばカリフォルニア州では有効期限が設定されていません。その他の国では、一般的に慢性病の症状が安定している患者様を対象にしています。
3. リフィル処方箋のメリット
リフィル処方箋には下記4つのメリットがあります。
- ・残薬対策になる
- ・医療機関の負担が軽減できる
- ・患者様の通院負担の軽減につながる
- ・医療費の削減が期待できる
それぞれについて、詳しく解説していきます。
3-1. 残薬対策になる
リフィル処方箋のメリットの1つ目は、残薬対策になることです。近年、長期処方による未使用薬問題が注目されており、解消する一策としてリフィル処方箋が有効とされています。
長期処方の目的は、患者様が度々医療機関を訪れる手間や診察料を削減することにあります。しかし、処方期間が数ヶ月に及ぶと、患者様自身の判断で服用を止めてしまい、未使用のお薬が増えてしまうことも少なくありません。
そこで処方薬を小分けにし、最後まで患者様にお薬を使用してもらうことができれば、残薬率を下げる効果があるとされています。
3-2. 医療機関の負担が軽減できる
リフィル処方箋のメリットの2つ目は、医療機関の負担が軽減できることです。リフィル処方箋は一度の診察で複数回分のお薬を処方できる制度であるため、患者様が病院やクリニックを訪れる頻度を減らすことが可能です。
これにより、医師は短期間に再診が必要ない患者様のために時間を割く必要が減り、他の患者様への対応や専門的な治療に集中することができます。その結果、全体としての医療機関の業務負担の軽減につながるでしょう。
3-3. 患者様の通院負担の軽減につながる
リフィル処方箋のメリットの3つ目は、患者様の通院負担の軽減につながることです。リフィル処方箋は、一度の診察で複数回分のお薬を処方できる制度です。そのため、病状が安定していて再診が必要ない患者様は、処方箋のためだけに病院やクリニックに足を運ぶ回数を減らすことができます。
患者様は再診の必要性が減るため、医療施設への行き来や診察を待つための時間が大いに短縮されるでしょう。また、通院にかかる時間的な負担だけでなく、交通費や診察費などの経済的な負担も軽減することが可能です。
さらに、リフィル処方箋は一度の診察で長期間にわたるお薬を受け取ることができます。これにより、病状が安定している場合や、予期せぬ事態(災害等)により通院が困難になった場合でも、お薬の在庫を確保できるのもメリットです。
そして、リフィル処方箋を使う場合、薬局には定期的に通うことになるため、薬剤師とのコミュニケーションが増えます。そのため、薬剤師が患者様の健康状態を把握しやすくなり、適切なアドバイスを受けられるでしょう。
3-4. 医療費の削減が期待できる
リフィル処方箋のメリットの4つ目は、医療費の削減が期待できることです。リフィル処方箋は、診察のために医療機関を訪れる回数が減り、診察費の削減が期待できます。
高齢社会が進むと共に医療費の拡大が予想されている現状において、リフィル処方箋の制度は医療費節減の効果的な手段となると期待されています。
4. リフィル処方箋のデメリット
リフィル処方箋には下記3つのデメリットがあります。
- ・患者様の変化に気づきづらい
- ・病院の収入低下につながる
- ・医薬品の転売に悪用される可能性がある
それぞれについて、詳しく解説していきます。
4-1. 患者様の変化に気づきづらい
リフィル処方箋のデメリットの1つ目は、患者様の変化に気づきづらいことです。リフィル処方箋の導入により、医師が患者様の健康状態を定期的にチェックする機会が減り、患者様の体調変化を見逃す危険性が高まる可能性があります。
そのため、結果的に健康上の問題や病状の悪化を引き起こすかもしれません。また、薬剤師が単純にお薬の調剤を続けてしまう懸念もあります。
薬剤師は、「このまま同じ薬を続けても問題ないか」「用量や種類を変更する必要があるのではないか」などを判断するスキルが求められます。
また、従来の処方箋の場合、医師と薬剤師の二重チェックが行われていましたが、リフィル処方箋では薬剤師のみのチェックになります。そのため、医療の安全性の保証や責任の所在について問題が起こらないよう、注意しなければなりません。
4-2. 病院の収入低下につながる
リフィル処方箋のデメリットの2つ目は、病院の収入低下につながることです。患者様が通院回数を減らすことで医療費が節約できる一方で、医療機関にとっては収益の減少が予想されます。
また、頻繁に病院に通う必要性がなくなることから、患者様が医療機関から遠ざかる可能性もあります。特に病状が安定していて、定期的に同じお薬を必要とする慢性疾患の患者様に対して顕著に現れる現象です。
これにより一部の医療機関では患者様の受診数が減少し、収入の低下につながる可能性があります。
一方で、リフィル処方箋の導入により医師が多くの時間を患者様のフォローアップや複雑なケースへの対応に割くことが可能となります。医療機関はより高度な医療サービスを提供することができ、新たな収入源となる可能性もあるでしょう。
4-3. 医薬品の転売に悪用される可能性がある
リフィル処方箋のデメリットの3つ目は、医薬品の転売に悪用される可能性があることです。リフィル処方箋が適切に管理されずに不適切な人の手に渡る場合、医薬品の転売などの悪用が生じる可能性は少なからず存在します。
また、医師による定期的な診察が減少するため、患者自身がお薬の必要性を判断することが難しいことも事実です。診察を受けないことで直接的なアドバイスや指導をする機会が減り、個々の判断による医薬品の使用が増える可能性があります。そのため、健康問題の悪化や新たな健康リスクを引き起こす可能性があることを理解しておきましょう。
5. リフィル処方箋の導入により薬剤師が受ける影響
リフィル処方箋は、薬剤師にどのような影響を与えるのでしょうか。まず、服薬指導や健康管理のアドバイス、残薬状況の確認など、患者様へのより深いコミュニケーションが求められるようになります。これまでよりも患者様への継続的なケアとして、細やかで個々に合わせたケアが必要となるでしょう。
医療環境が進化し、新しいシステムが導入されるにつれて、薬剤師は新しい状況に対応できる能力が要求されます。日本でもリフィル処方箋の受付割合が増えていくと、薬剤師の役割はますます重要となり、患者様に対する責任は大きくなります。
それに伴い、深い薬学の知識と洞察力が必要となるでしょう。患者様との信頼関係の構築もまた、不可欠な業務と言えます。そのために、薬剤師はこれまで以上に高い専門知識と技術を身につける必要があるでしょう。
6. 薬剤師はリフィル処方箋について理解しておこう
リフィル処方箋は、患者様が定期的に同じお薬を服用する際、再診を必要とせずにお薬を補充できる制度です。患者様の通院の手間を減らすことができ、医療費の削減や薬剤師の業務効率化が期待できます。しかし、お薬が適切に服用されているかの確認や患者様の健康状態を継続的に確認するという観点からは、薬剤師の役割がより重要になってきます。
リフィル処方箋が日本で広まっていく可能性を考慮に入れ、薬剤師としてコミュニケーションスキルを磨き、薬学の知識をさらに身につけていきましょう。
アポプラス薬剤師編集部
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