薬剤師の初任給は高い?給料以外の注意点や年収が上がる方法を解説
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「薬剤師の初任給、他の人はいくらもらっているの?」「初任給を上げる方法を知りたい」
薬剤師は、6年制の薬学部を経て国家試験に合格したのち、取得できる国家資格です。簡単には就けない職業であることから、年収水準が高いイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、自分が受け取った初任給をみると、高くないのではと疑問を持つ薬剤師も少なくありません。
そこで今回は、薬剤師の初任給の平均額や、薬局や病院など勤務先ごとの薬剤師の初任給について詳しく解説していきます。職場を選ぶときの注意点や、年収を上げる方法も紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
薬剤師の初任給は高い?給料以外の注意点や年収が上がる方法を解説
1. 薬剤師の初任給は高い?安い?
薬剤師の初任給は、他の職種と比べて高いのか安いのか、見当がつかない人もいるでしょう。厚生労働省の賃金構造基本計画書によると、薬剤師の初任給の平均は月給31万円です。大学卒の初任給の平均は月給22万円前後ですから、薬剤師の月給は平均よりも9万円ほど高く、一年間で計算すると108万円もの差が出てくることが分かります。
他の医療系職種をみてみると、医師が月給51万円、看護師と診療放射線技師が月給24万円となっています。医師の額には及びませんが、他の医療系職種と比較しても、薬剤師の初任給は高収入だと分かります。人の健康に関わり、薬を扱うという責任の重い職業であることが、初任給の高い理由の一つだと考えられます。
※出典:令和3年賃金構造基本統計調査|厚生労働省 ※出典:令和3年賃金構造基本統計調査の概況|厚生労働省2. 薬剤師の初任給が少ないと思ったときにはチェック!
待ちに待った初任給を受け取り、給与明細を確認すると「募集要項に書かれていた額よりも、給料が安い」と思うことがあります。このような状況が起こる理由は、給料の基礎知識を得ることで解消できるはずです。ここでは、初任給とは、手取りとは何かについて詳しく解説していきます。
2-1. 初任給とは
初任給とは、基本給に各種手当がついた額のことを指します。基本給とは、各種手当を除いた毎月固定の基本賃金のことです。手当は月々変動することがありますが、基本給は昇給しない限り、変わりません。
企業によっても異なりますが、各種手当には、通勤手当、薬剤師手当、時間外労働手当、住宅手当、残業手当などがあります。帰省手当や引越し手当など、独自の福利厚生を設定している企業もあります。
2-2. 手取りとは
手取りとは、自分が実際に受け取れる金額のことです。一般的に、初任給の手取りは以下の計算式で算出できます。
・手取り額=総支給額(基本給+各種手当)- 社会保険料 - 税金
2割程度は社会保険料と税金が引かれるため、手取り額は初任給のおよそ80%だと考えておきましょう。
また、給与の総支給額から社会保険料や税金を差し引くことを、控除といいます。基本的には、毎月の給料から税金と社会保険料が控除されますが、社会人一年目の初任給では、社会保険料の中の健康保険料と厚生年金保険料が引かれるケースは多くありません。
健康保険料と厚生年金保険料は5月から、介護保険料は40歳から控除されるのが一般的です。税金には、所得税と住民税がありますが、住民税は前年の総支給額を基に計算されるため、社会人1年目では引かれません。
3. 勤務先ごとの薬剤師の初任給
薬剤師は、勤務先の職種によって仕事内容と初任給が異なります。ここでは、薬剤師の主な勤務先である以下の4つに分けて、初任給の例をみていきましょう。
- 製薬会社など企業
- 調剤薬局
- ドラッグストア
- 病院
それぞれ、詳しく解説していきます。
3-1. 製薬会社など企業
まずは、製薬会社に勤務した場合の初任給をみていきましょう。下表は、製薬会社などの企業の募集要項から、初任給の例を3つ挙げたものです。
- 企業名
- 初任給
- 備考
- 武田薬品工業株式会社
- 301,000円
- 修士・学士(6年制)
昇給:年1回、賞与:年2回
- アステラス製薬
- 254,000円
- 修士・学士(6年制)
昇給:年1回、賞与:年2回
- 第一三共株式会社
- 254,000円
- 修士・学士(6年制)
昇給:年1回、賞与:年2回
製薬会社など企業では、MRや開発職や製薬技術職など職種が多数ありますが、どの職種でも初任給は25万〜30万円程度が多くみられます。初任給は高い方ではありませんが、インセンティブがついたり昇給したりすることもあり、将来的にみると給料は高くなる傾向にあります。
製薬会社は、昇進制度や福利厚生が整っている大手企業が複数あり、薬剤師には人気の就職先です。
企業薬剤師のさまざまな種類と仕事内容、具体的に必要なるスキルなどを解説します。
3-2. 調剤薬局
次に、調剤薬局勤務のケースをみていきましょう。下表は、薬局企業の募集要項から、初任給の例を3つ挙げたものです。
- 企業名
- 初任給
- 備考
- クオール薬局
- 261,000円~321,000円
- 地域限定コース
昇給:年1回、賞与:年2回
- さくら薬局
- 253,000円~350,200円
- 特殊地域勤務手当、赴任手当などあり
昇給:年1回、賞与:年2回
- アイングループ
- 250,000円
- 自宅通勤社員
昇給:年1回、賞与:年2回
調剤薬局の薬剤師の初任給は、25万円程度の企業が多くみられます。全国に店舗を持つ大手チェーンの調剤薬局などでは、働くエリアが選択できる企業もあります。勤務地域を限定して働くか、全国のさまざまな地域に異動があるのかに応じて、給与が異なります。
一般的には、広範囲で異動のあるポジションのほうが高収入は見込め、初任給が35万円という企業も少なくありません。
これには、調剤薬局の薬剤師は地域によって不足状況が異なることが関係しています。地方では薬剤師の数が不足しているため、都市部から地方に異動することで給料が高くなるケースも考えられます。
薬剤師の職場として代表的な調剤薬局について、具体的な仕事内容や必要なスキルを解説します。
3-3. ドラッグストア
次に、ドラッグストア勤務のケースをみていきましょう。下表は、ドラッグストアの募集要項から、初任給の例を3つ挙げたものです。
- 企業名
- 初任給
- 備考
- ウエルシア薬局株式会社
- 355,000円
- 勤務区分は選択制
昇給:年1回、賞与:年2回
- 株式会社サンドラッグ
- 328,750円~396,750円
- OTC勤務時、および調剤+OTC研修終了後
昇給:年1回、賞与:年2回
- 株式会社ツルハ
- 300,000円~460,000円
- 調剤部門、OTC部門あり
昇給:年1回、賞与:年2回
ドラッグストアの薬剤師は、初任給が30万〜35万円程度の企業が多くみられます。ドラッグストア薬剤師は、OTC医薬品の販売、レジや品出しといった幅広い業務を行うというのが特徴です。調剤薬局併設型の店舗では、調剤や服薬指導、在宅医療事業などの業務も行います。
そのため、病院や調剤薬局の薬剤師よりも、給料は高い傾向にあります。また、土日祝日も営業しているドラッグストアでは、時間外勤務や夜間勤務があり、特別勤務手当がつくこともあります。
店舗が多く薬剤師の求人も豊富で勤務しやすい職場であるドラッグストアについて、働き方や特徴をご紹介。
3-4. 病院
次に、病院薬剤師のケースをみていきましょう。下表は、病院薬剤師の募集要項から、初任給の例を3つ挙げたものです。
- 企業名
- 初任給
- 備考
- 公立大学法人横浜市立大学
- 232,000円
- 通勤手当、超過勤務手当、期末・勤勉手当、扶養手当、住居手当など別途
- 総合東京病院
- 245,600円
- 夜勤手当、住宅手当など上限50,000円/月
昇給:年1回、賞与:年2回
- 独立行政法人 国立病院機構 近畿グループ
- 208,400円
- 月2回の宿日直手当+その他手当別途
昇給:年1回、業績手当:年2回
病院薬剤師の初任給は、20万〜25万円程度が多くみられます。医師や看護師とチームとなり、患者さんの治療に携われる、やりがいのある仕事です。
病院薬剤師は、調剤薬局やドラッグストア勤務に比べて低めですが、夜勤や休日出勤などが発生することもあります。そのため、夜勤手当・日直手当がつき、実際の手取りは、記載の初任給よりも高くなることもあるでしょう。
また、国公立病院では、公務員薬剤師として雇用されるため、定期的に昇給があり、病院側の都合で解雇されるリスクもありません。民間病院は、病院ごとに給与体系が異なります。
病院やクリニックで働く薬剤師の具体的な仕事内容や、働くメリット、必要なスキルについて解説します。
4. 薬剤師が初任給をみて職場を選ぶときの注意点
職場を選ぶときに初任給を確認することは大切ですが、募集要項をみるときには、注意すべきことがあります。主なポイントは以下の4点です。
- 給与や待遇だけで選ばない
- キャリアビジョンにあった職場を選ぶ
- 勤務時間や昇給など細部にまで目を通す
- 未経験の業種は研修があるかを確認する
一つずつ、詳しく紹介していきます。
4-1. 給与や待遇だけで選ばない
薬剤師が職場を選ぶときには、給与や待遇だけで選ばないことが大切です。給料が高いところには、それなりの理由があることも少なくありません。
人手不足で多忙、離職率が高い、特殊な職場環境であるなど、職場に問題が潜んでいる可能性もあります。給与が高く待遇がよかったとしても、労働環境が悪い、人間関係が悪いなど、働きづらい職場では不満が溜まってしまいます。
また、待遇が手厚いという理由だけで選ばないこともポイントです。独身寮がある、資格取得制度が整っているなどの福利厚生があったとしても、活用できなければ意味がありません。記載されている待遇面の条件が、自分にとって優先度の高いものかどうかを慎重に検討しましょう。
4-2. キャリアビジョンにあった職場を選ぶ
募集要項をみて職場を選ぶときには、キャリアビジョンにあった職場を選ぶことが大切です。管理職につきたい、薬剤師として専門性を高めたい、いずれ独立したいなど、キャリアプランは人それぞれです。
現在、勤務薬剤師として働いている人が管理職を目指すなら、まずは管理薬剤師候補の求人をチェックしましょう。マネジメント経験のない薬剤師が、管理薬剤師のポジションに転職するのは難しいものです。しかし、管理薬剤師候補であれば、経験を積んだのちに管理薬剤師としてキャリアアップすることが可能です。
薬剤師として専門性を高めたい場合は、認定薬剤師や専門薬剤師の資格取得をサポートする制度が充実している職場を選びましょう。単純に「資格支援制度が充実している」という観点だけでなく、自分が身につけたい知識や能力に合った制度が整っているかどうかを確認することが大切です。
4-3. 勤務時間や昇給など細部にまで目を通す
給与だけに着目するのではなく、勤務時間や昇給に関する手当など、募集要項の細部にまで目を通すことがポイントです。同じような月給の職場があったとしても、勤務時間が短い、極端にボーナスが少ない、今後昇給が望めないなどの違いがあった場合、長期的にみると収入に差が出てきてしまいます。
そして、今の時点で支給される手当だけに目を向けるのではなく、資格手当、役職手当など、将来的な部分も確認しておきましょう。5年後、10年後も働く想定で募集要項をみることで、職場のミスマッチが防げます。
4-4. 未経験の業種は研修があるかを確認する
異なる業種への転職で、薬剤師の求人情報を確認するときには、研修制度があるかを確認しましょう。
製薬会社のMRが調剤薬局を選ぶ、ドラッグストア店員が病院薬剤師を選ぶなど、業種が異なる転職先を選ぶときには、教育研修制度がある企業を選んだほうが適切だと言えます。チェーン展開する薬局やドラッグストアでは、研修制度を設けているケースが多くみられます。
しかし、中小企業でも、教育担当をつけるなどして、新人が働きやすい環境を作っている職場もあります。会社規模だけでなく、未経験者の入社実績があるかを確認しておくとよいでしょう。
5. 初任給は低くても年収が上がる薬剤師の働き方3つ
現在の職場の初任給が低いと思ったときには、年収を増やしたいと思うこともあるでしょう。薬剤師が年収アップを目指すには、以下の3つの方法があります。
- 実務経験を積む
- 資格を取得する
- 転職する
それぞれの方法を詳しく解説していきます。
5-1. 実務経験を積む
初任給は低くても、薬剤師の年収を上げるには、実務経験を積むという方法があります。社会人一年目は、分からないことだらけで業務が円滑に行えないこともあるでしょう。しかし、経験を積んでいくと仕事の効率もアップし、職場での信頼も得られやすいため、担える業務が増えていきます。
また、一般的には、調剤薬局や病院、ドラッグストアなど、どの職種でも社員等級制度を設けているものです。経験年数を積み上げていけば、勤続年数や上長の評価に応じて、段階的に給与が少しずつ上がっていくことが予想されます。
そして、実務経験を積むことで、管理薬剤師や店長、薬局長などに昇進することも目指せます。役職に就けば役職手当や歩合がつき、結果的には給料アップが見込めます。薬剤師としての経験を積んでいくことが、年収アップへの堅実な道だと言えるでしょう。
5-2. 資格を取得する
初任給が低くても、資格を取得することで年収アップが期待できます。年収アップに役立つのは、認定薬剤師や専門薬剤師などの資格です。
資格を取得すると、資格手当がつく病院や企業もあります。また、専門知識を有していることが評価され、管理薬剤師などに就任するケースも少なくありません。
特に、医療薬学専門薬剤師やがん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師といった専門資格を持っていると、いずれ転職を考えたときにも有利に働くでしょう。
5-3. 転職する
初任給が低かった場合に年収アップを目指すには、転職するという方法もあります。出世を目指そうにも、上のポストが埋まっていて昇進が見込めない職場もあるでしょう。
薬剤師は、勤務先によって年収が異なるため、調剤薬局から製薬会社へ、病院薬剤師からドラッグストアへなど、違う職種へと転職することで収入が上がるというケースも考えられます。
また、薬剤師は同じ職種や仕事内容でも、地方の職場を選ぶことで収入が高くなることがあります。薬剤師にとって転職は、年収アップを実現させる有効な手段の一つです。
6. 初任給から年収アップ!薬剤師の転職はエージェントを活用しよう
薬剤師は、大卒の社会人の中でも、初任給が高い職業です。勤務先ごとの初任給をみると、ドラッグストア、調剤薬局などが高い職種だと言えます。しかし、転職するときには、給与や待遇だけでなく、勤務時間やその他の手当などにもよく目を通して職場を選ぶことが重要です。
転職を考えたときには、転職サービスを利用してみてはいかがでしょうか。転職エージェントは、募集先の企業に直接ヒアリングを行っているところもあり、募集要項だけでは分からない職場の情報を持っていることがあります。薬剤師専門の転職サービスに登録して、自分にあった職場を探しましょう。
アポプラス薬剤師編集部
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