薬局の診療報酬とは?知っておきたい薬剤師の知識
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薬剤師として調剤業務や服薬指導をするときには、診療報酬についての知識も必要不可欠です。診療報酬は、医療サービスに対する報酬の仕組みであり、薬剤師業務にも大きな影響を与えます。
診療報酬の改定は、2年おきに社会的な要請や経済的な背景を反映させるために行われています。診療報酬改定には、調剤薬局での業務や医薬品に関連する報酬も含まれるため、薬剤師として詳細を理解しておくことは重要です。
そこで今回は、診療報酬改定が何故行われるのかについてと、2022年の具体的な改定内容、 目的について詳しく解説していきます。
目次
1. 2022年に改定!新しくなった「診療報酬」とは
- ・診療報酬とは
- ・診療報酬は内閣が決める
- ・診療報酬は2年おきに改定がある
- ・診療報酬改定率とは
1-1. 診療報酬とは
診療報酬とは、医療機関で受けた治療に対して患者様が支払う医療費のうち、医療保険から支払われる料金のことを指します。自由診療の料金は各々の病院で決められていますが、保険適用の診療報酬は任意で変更できず、全国で同一の医療費が適用されるように定められています。ただし、夜間や休日などは別料金がかかるため例外です。
診療報酬は、医療機関の設備費、人件費、医薬品費などに充てられるため、経済状態や物価の変動、消費税率に基づいて調整する必要があります。好景気で物価が上昇すると、医療の運営費用も増加します。
反対に経済が低迷すれば、医療費の支払いが難しいという人が増えるかもしれません。このような背景から、現時点の経済や社会の状況に応じて、診療報酬を適切に調整する必要があり、そのプロセスが診療報酬改定と呼ばれています。
1-2. 診療報酬は内閣が決める
診療報酬は、医療機関が独自に設定するものではなく、医科・歯科・調剤・薬価など全体に対してどれだけの予算を分配するのか、内閣府が予算編成の中で決めます。基本方針の策定は、社会保障審議会の医療部会や医療保険部会が行います。
その後、中央社会保険医療協議会(中医協)が具体的な診療報酬点数と振り分けを行い、最終案を出します。中医協は厚生労働省の諮問機関で、医師・薬剤師・歯科医師などの診療側と、被保険者や事業主などの支払い側からなるメンバーで構成されます。
ここで、病院の経営状況・医薬品のコスト・賃金や物価の動向・GDP等、医療と経済の複合的な要素を慎重に考慮して、診療報酬が確定されます。
高齢化社会が進むに伴い、医療費は増加傾向にあります。景気も同時に上向いていれば問題ありませんが、そうでない場合は、診療報酬の審議に多くの課題が生じることになります。
医療サービスの質と量が落ちる恐れがあるため、診療報酬の削減には慎重な判断が必要です。そのため、医療費の増加を抑制する方策として、予防医学の推進なども検討されています。
1-3. 診療報酬は2年おきに改定がある
診療報酬改定は、2年おき、西暦で言うと偶数の年に実施されるというのが原則です。このときに、医科・歯科・調剤・薬価などの各項目に対して、増減の割合が定められます。
ただし、改定はこの時期だけで行われるわけではありません。消費税の引き上げや歯科治療に使われる金・銀などの価格上昇などの特別な状況が起こると、通常の改定時期以外にも臨時の改定が実施されることがあります。
例えば、消費税率の引き上げは、病院や薬局にとって医療機器や消耗品の購入時に負担が増えるものです。しかし、保険診療は非課税なので増税後も変動しません。そのため、診療報酬を上げることで対応する必要があります。
歯科医院では、治療や医療器具に使用する金属の卸値が市場価格に応じて変動することもあります。市場価格が上昇しているにも関わらず、診療報酬が変わらないと、歯科医院にとっての経済的負担が大きくなります。こうした状況では、金属の市場価格と合わせて診療報酬も適切に調整する必要が出てくるのです。
このように、診療報酬は、経済や社会の大きな変動があるたびに適宜変更される仕組みとなっています。ただし、変動するたびに見直すだけでは、適切な診療報酬の設定が難しい場合もあるでしょう。そういった理由から、2年に1度の定期的な改定が行われています。
1-4. 診療報酬改定率とは
診療報酬改定率とは、診療報酬の増減を百分率で示したものです。診療報酬の増加を意味するときにはプラスの値を、減少を意味する際にはマイナスの値を用います。
さらに、医療と経済の動向を踏まえて、改定後に必要とされる医療報酬の額を算出するのが医療報酬改定率です。未来の予測である医療報酬改定率は、値がマイナスであっても、患者様の数が増加した場合、医療機関の収益は上がることもあります。
診療報酬改定率が下がった場合でも、医療従事者の給与が必ずしも下がるわけではありません。全体的な数字がマイナスであっても、医科・歯科・調剤の部門などで報酬が上昇することもあるためです。
通常、診療報酬改定率は0%から最大で4~5%程度の範囲で変動します。これは、診療 報酬の額を急激に増減させると、医療の提供者だけでなく、支払い側の負担も大きくなるためです。診療報酬改定率の絶対値は抑えられ、大きな変動が生じないような配慮がなされています。
2. 2022年の薬局に関係のある診療報酬改定6項目
2022年の診療報酬改定で、薬局に関係のあるものの変更には以下の6つがあります。
- ・地域支援体制加算の要件・評価見直し
- ・在宅業務の算定要件の見直し
- ・薬剤調製料・調剤管理料・服薬管理指導料
- ・リフィル処方箋の導入
- ・オンライン服薬指導・資格認定
- ・後発医薬品体制加算の見直し
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
2-1. 地域支援体制加算の要件・評価見直し
2022年の薬局に関係のある診療報酬改定の1つ目は、地域支援体制加算の要件・評価見直しです。地域支援体制加算は調剤基本料の計算において、地域医療への貢献度に応じた新しい評価体系へと見直されました。以前は38点の加算でしたが、施設基準の区分に基づいて以下のように評価されるようになります。
- ・地域支援体制加算1:39点
- ・地域支援体制加算2:47点
- ・地域支援体制加算3:17点
- ・地域支援体制加算4:39点
これにより、薬局や薬剤師の地域医療への貢献がより細かく評価されるようになりました。地域支援体制加算の要件変更により、収益への影響を確認する必要があるでしょう。
2-2. 在宅業務の算定要件の見直し
2022年の薬局に関係のある診療報酬改定の2つ目は、在宅業務の算定要件の見直しです。在宅薬学管理を推進するため、患者の状態に合わせた「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」の要件が変更されました。これにより、主治医だけでなく、他の医師の指示に基づく訪問薬剤管理指導の実施もできるようになり、他科の処方箋への対応がしやすくなりました。
さらに、「在宅中心静脈栄養法加算(150点)」、「在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算(250点)」などの新しい加算方法が導入されました。これにより、在宅患者訪問時の薬剤管理や指導の重視が強まったと言えます。
退院時の共同指導においても、薬剤師や管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士などの参加職種が拡大され、医療機関や医療従事者間での情報共有と連携が効率的に進められるようになりました。
2-3. 薬剤調製料・調剤管理料・服薬管理指導料
2022年の薬局に関係のある診療報酬改定の3つ目は、薬剤調製料・調剤管理料・服薬管理指導料についてです。
【薬剤調製料】
対物業務と対人業務を適正に評価するため、薬局や薬剤師の業務評価の枠組みが見直されました。これまでは「調剤料」として処方日数に応じて点数が分けられていた内服薬が、一律で24点となり、新設された調剤管理料内で処方日数に基づいた追加点が与えられるという仕組みになりました。これにより、対物業務と対人業務が個別に評価されるようになったのです。
【調剤管理料・服薬管理指導料】
かつて「薬剤服用歴管理指導料」という名前で算定されていたものが、「服薬管理指導料」に変更され、点数が増加しました。算定の基準がさらに具体的になり、薬学に基づいた人対人の業務がより高く評価されるようになっています。
特に、「患者様の薬剤使用の現況などを継続的かつ的確に把握し、必要な指導などを提供すること」という要件が明確に記述されました。これまで処方箋を渡すだけだった薬局業務ですが、次の診察までの患者様への調剤後のフォローや、医師への情報提供、フィードバックなど、持続的な薬学的サポートが求められるようになりました。
参考:調剤報酬点数表(令和5年4月1日施行)|日本薬剤師会作成2-4. リフィル処方箋の導入
2022年の薬局に関係のある診療報酬改定の4つ目は、リフィル処方箋の導入です。リフィル処方箋とは、病状が一定している患者様に対して、医師の指示に基づき、医師と薬剤師が連携し、一定期間内で処方箋を最大3回まで使えるという制度です。
そのため、調剤の日付や次回の調剤の予定日をリフィル処方箋に記入するなど、事務作業にも細心の注意が必要です。リフィル処方で調剤を行う場合、薬剤師は患者様に継続的な薬学的管理指導をすることが求められています。
また、同じ薬局での調剤を受ける必要があるなどの説明をする必要もあります。薬剤師は、リフィル処方箋の導入により、これまで以上に、薬学的視点や医療機関との連携が求められるようになりました。
リフィル処方箋とは何か、メリットとデメリットと薬剤師にどのように影響を及ぼすのかについて、詳しく解説します。
2-5. オンライン服薬指導・資格認定
2022年の薬局に関係のある診療報酬改定の5つ目は、オンライン服薬指導・資格認定です。
【オンライン服薬指導】
オンライン薬剤指導に関するルールの再設定に基づき、情報通信機器を活用した服薬指導に対する評価が見直されました。
具体的には、情報通信機器を利用して薬剤指導を行った場合、これまでの43点から「原則3カ月以内に再び処方箋を提出した患者様に対して行った場合(45点)」と「患者様以外の患者様に対して行った場合(59点)」に改定され、薬剤管理指導料の一部としてより高い評価が与えられるようになりました。
【オンライン資格認定】
オンライン資格確認システムを介して患者様の薬剤情報や特定健診情報などを入手し、その情報を活用して調剤などを行うことに対する評価が、調剤管理料に含まれる「電子的保健医療情報活用加算(3点)」として新たに設けられました。
2-6. 後発医薬品体制加算の見直し
2022年の薬局に関係のある診療報酬改定の6つ目は、後発医薬品体制加算の見直しです。改定により、後発医薬品の調剤数量割合の基準が新たに設定されました。
- ・後発医薬品調剤体制加算1:80%以上で21点
- ・後発医薬品調剤体制加算2:85%以上で28点
- ・後発医薬品調剤体制加算3:90%以上で30点
さらに、調剤数量割合が著しく低い薬局に適用される調剤基本料の減算規定も改訂されました。具体的には、減算点数が2点から5点へと変更され、対象薬局の範囲も広がりました。
3. 薬局関連の診療報酬について知識をアップデートしておこう
薬局の診療報酬は、薬剤師にとって重要なポイントです。まず、最新の法改正や方針を理解することで、法令遵守がしやすくなり、患者様のためになる薬局サービスを提供できるようになります。また、患者様への対応がより適切に行えるようになり、薬剤師として地域社会へも貢献できるでしょう。
知識をアップデートしておくことは、転職を考えたときにも役立ちます。最新の情報や知識を持つことで、自分の専門性やスキルに自信を持つことができ、新しい職場でのコミュニケーションや業務遂行にも前向きに取り組めるようになるはずです。
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アポプラス薬剤師編集部
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