在宅医療における薬剤師の役割とは?業務内容や求められるスキル
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在宅医療の現場では、患者さま一人ひとりに合わせた細やかなケアが求められています。そのため、薬剤師の役割はますます重要になってきています。自宅で治療を受ける患者さまに対して、薬の管理や服薬指導をおこなう在宅医療薬剤師は、患者さまの生活を支える重要な存在です。
在宅医療の分野で活躍するには、従来の薬局業務とは異なるスキルを身につける必要があります。そこで本記事では、在宅医療における薬剤師の具体的な業務内容や、求められるスキルについて詳しく解説します。
目次
在宅医療における薬剤師の役割とは?業務内容や求められるスキル
1. 在宅医療での薬剤師の役割とは?

在宅医療での薬剤師は、どのような業務と役割を担うのでしょうか。ここでは、以下の2つにわけて在宅医療での薬剤師の役割を解説します。
- 在宅医療とは
- 在宅医療における薬剤師の役割
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
1-1. 在宅医療とは
在宅医療とは 「患者さまの自宅や居住する場所」で提供される医療行為のこと を指します。通院が難しい患者さまのために、医師や看護師などの医療従事者が直接自宅を訪れ、さまざまな医療活動をおこないます。
▼具体例
- かかりつけの医師による診療
- 薬剤師による薬の管理や服薬指導
- 理学療法士のリハビリ
- 訪問看護師による看護
- 管理栄養士による栄養指導 など
また、在宅医療は「訪問診療」と「往診」の2つにわけられます。訪問診療は、医師があらかじめ立てた医療計画の通りに、定期的に患者さまの自宅を訪れておこなう診療のことです。往診は、患者さまからの要望を受けて、その都度、医師が訪問する形の診療を指します。
在宅医療では、患者さま一人ひとりのニーズに合わせた質の高い医療サービスを提供することができます。また、病床の削減にもつながるため、近年日本全体で推進されつつあります。こういった在宅医療の普及に伴い、薬の管理や指導をおこなう薬剤師の役割もますます重要視されるようになりました。
1-2. 在宅医療における薬剤師の役割
在宅医療での薬剤師の役割は、患者さまへ効果的かつ安全に薬物治療を提供することです。一般的に薬剤師は薬局や病院などで勤務しますが、医師と同様に患者さまの自宅や施設に訪問し、薬剤の提供や服薬指導・薬剤管理などをおこないます。
在宅医療の薬剤師は、 薬物治療の専門家として、他の医療従事者と連携しながら患者さまやその家族をサポートする 重要な役割を担います。
在宅薬剤師の役割や仕事内容、求められるスキルや経験について詳しく解説します。
2. 在宅医療での薬剤師の業務内容

薬剤師は、具体的にどのような仕事をするのでしょうか。在宅医療での薬剤師の業務内容には、以下の4つがあります。
- お薬の配達
- 患者さまへの服薬指導
- お薬の保管や管理の指導
- 他の医療従事者との連携
2-1. 薬の配達
在宅薬剤師の業務の1つに、患者さまの自宅や施設への薬剤・衛生用品の配達があげられます。
在宅医療を利用している患者さまの中には、外出が困難で、処方箋に基づいた薬剤を調剤薬局や病院に取りに行けないことも珍しくありません。そのため、薬剤師が直接、患者さまのもとへ出向き、薬剤や衛生用品を届けます。
2-2. 患者さまへの服薬指導
在宅医療では、調剤や病院と同様に、患者さまの状況や健康状態に応じて服薬指導をおこないます。また、薬剤の飲み合わせの確認をするのも、在宅薬剤師の業務の一部です。
在宅医療を受ける患者さまの多くは、複数の病院を受診しているため、各病院で処方される薬剤の相互作用が体に悪影響を及ぼすことも考えられます。そのため、飲み合わせによるリスクがないかを判断し、必要に応じて医師へ処方変更を提案するのも重要な業務の1つです。
2-3. 薬の保管や管理の指導
在宅医療での薬剤師の業務には、薬の保管や管理の指導もあります。在宅医療で対応する患者さまは、認知能力の低下や身体機能の衰えにより、薬の保管や管理が上手くできないことも多いです。薬を飲み忘れたり、間違った方法で服用したりすることもあります。
そのため、患者さまの状況をきちんと把握し、薬の保管や管理方法について指導をするのも在宅医療薬剤師の仕事です。
2-4. 他の医療従事者との連携
在宅医療では、薬剤師だけではなく、医師・看護師・栄養士・ケアマネージャーなど、多種多様な医療従事者が1人の患者さまにかかわっています。薬剤師は、他職種のスタッフと連携して業務を進めていくことが不可欠です。また、患者さまから得られる貴重な情報を、医師や他の医療従事者に伝えることも、大切な業務の1つです。
3. 在宅医療薬剤師のニーズが高まる背景

在宅医療薬剤師の必要性が高まっている理由には、以下の3つがあります。
- 在宅医療の患者数の増加
- 病床の減少
- 社会のニーズの変化
それぞれについて、詳しく解説します。
3-1. 在宅医療の患者数の増加
在宅医療において、外来診療を受ける患者数は、平成11年の約6万9500人から、現在の約17万3600人まで増加しており、約2.5倍に増えています。
少子高齢化が進んでいることから、今後も在宅医療を利用する患者数はさらに増加する ことが予想されています。
3-2. 病床の減少
医療現場での人手不足や病院経営におけるコスト削減などを背景に、全国の病院の病床数はゆるやかに減少中です。
病床不足により入院治療が困難となった患者さまが、在宅医療へと移行するケースが増えると予想されている ため、在宅医療薬剤師のニーズも今後増加する可能性が高いでしょう。
出典: 令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告|厚生労働省
3-3. 社会のニーズの変化
近年、治療を外来や入院で受けるという従来の考え方から、自宅で治療を受けたいと望む方が増加しています。住み慣れた環境で家族とともに過ごしたい、家族や親戚に介護されたいという理由から、在宅医療のニーズが高まっています。
国は、このような社会のニーズに対応するため、「地域包括ケアシステム」の実現を推進しています。地域包括ケアシステムは、医療現場での多職種連携を通じて、住まい、医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することを目指しています。
とくに、在宅医療と在宅介護の実施が重要視されており、在宅医療薬剤師はシステムの一部として、地域における包括的なケアの提供に貢献しています。
4. 在宅医療薬剤師の現状と課題

在宅医療の重要性がますます高まる中で、在宅医療薬剤師の役割は重要になってきていますが、現場ではさまざまな課題が存在し、十分な体制を整えることが難しい状況です。
ここでは、在宅医療薬剤師の現状と課題として、以下の2点について解説します。
- 人手不足で在宅に対応できる体制を整えきれない
- 在宅医療に対応できる薬局の情報が整理されていない
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
4-1. 人手不足で在宅に対応できる体制を整えきれない
現在、在宅医療のニーズが高まる一方で、人材不足により、休日・夜間に対応できる体制が整えられていないのが現状です。とくに地方では、薬剤師の人数が少なく、在宅医療を希望する患者さまへの対応が難しくなっています。
小規模の薬局では、患者さまの自宅を訪問する際、一時的に薬局を閉めざるを得ない場合や、閉局後に訪問しなければならないケースも多いです。また、在宅医療に必要なスキルを持つ薬剤師も不足しているため、即戦力となる人材の確保も求められています。
こうした課題に対応するためには、在宅医療に取り組む薬局の体制を整えると同時に、薬剤師のスキルを養成するための支援が必要です。
4-2. 在宅医療に対応できる薬局の情報が整理されていない
地域や医療機関に対して、在宅医療に対応できる薬局の情報が十分に伝わっていないケースが見られます。たとえ在宅医療が可能な体制を整えていても、その情報が共有されていなければ、患者さまに適切なサービスを提供する機会は減少してしまいます。
状況を改善するためには、病院・薬局・薬局間での薬剤師の連携を強化し、情報を効果的に共有する仕組みを整えることが重要です。
これらの課題からわかる通り、薬局は「在宅医療」に対応できる薬剤師を求めています。事実、近年の転職市場では在宅の経験のある薬剤師に好条件の求人が出ることも少なくありません。
これからの社会動向を見越したキャリア形成のために、薬剤師が在宅のスキルを磨いておくのはおすすめです。
5. 在宅医療薬剤師に必要なスキル

在宅医療の業務に興味があっても、実際にどのようなスキルを身につければよいのか想像がつかないこともあるでしょう。在宅医療薬剤師を目指すには、どのようなスキルが必要になるのか事前に知っておくことが大切です。
在宅医療薬剤師に必要なスキルには、大きく以下の2つがあります。
- コミュニケーション能力
- 健康に関する豊富な知識
それぞれ解説していきます。
5-1. コミュニケーション能力
在宅医療は、他の医療者とのチームワークが欠かせない業務であるため、薬剤師にはコミュニケーション能力が求められます。医師・訪問看護師・歯科医師・ケアマネージャー・ホームヘルパーなど、多様な専門職が協力し、患者さまの支援をおこなうためです。
また、患者さまの情報は、顔を直接合わせることなく連絡ノートや電子カルテ、電話など、さまざまな方法で伝達されることも珍しくありません。どの伝達方法であっても、他の医療者と適切なコミュニケーションを取ることが患者さまへのサポートに大きく影響します。
さらに、患者さまの健康状態のチェック時にも、コミュニケーションスキルは欠かせません。在宅医療の薬剤師は、患者さまや家族との対話を通じて、薬に関する悩みや問題を理解していく必要があるでしょう。
5-2. 健康に関する豊富な知識
在宅医療の薬剤師には、薬剤や健康に関する豊富な知識は不可欠です。調剤薬局や病院とは異なり、患者さまの日常生活に密接にかかわるため、多角的に患者さまの健康状態を把握する必要があります。
そのため、薬剤だけではなく、服薬アドヒアランス向上の方法や生活習慣との治療の関係性といった、幅広い知識も必要になるでしょう。
6. 在宅医療薬剤師になるには?
在宅医療薬剤師になるには、まず在宅医療対応の薬局に勤務する必要があります。スキルに関しては、経験を積んで身につけていくのが一般的です。
現在の職場が在宅医療に対応していない場合は、転職も視野に入れる必要があるでしょう。
7. 在宅医療薬剤師に就くときの注意点

在宅医療薬剤師に就くときの注意点には、以下の3つがあります。
- 時間外労働が発生することもある
- 運転免許証が必要なことがある
- 患者さまの家で二人きりになる可能性がある
7-1. 時間外労働が発生することもある
在宅医療薬剤師に就くときには、時間外労働が発生する可能性があることを理解しておきましょう。とくに、薬局の人員が少ない場合は注意が必要です。
さらに、お薬に関連する問題や急な体調変化が患者さまにあった場合、休日中でも迅速な対応が必要になることがあります。時間外労働がゼロにはならないこともあると、理解しておきましょう。
7-2. 運転免許証が必要なことがある
業務で社用車を使用して訪問するケースもあるため、運転免許証の保有が必要となる企業は多く見られます。在宅医療薬剤師の職場に応募する場合は、募集要項の保有資格欄を事前に確認しておきましょう。
7-3. 患者さまの家で二人きりになる可能性がある
在宅医療薬剤師は、 患者さまの家で二人きりになる可能性があることにも注意が必要です。「患者さまと1対1の状況で、何かトラブルが起きたらどうしよう」などの不安を抱く人もいるでしょう。患者さま宅でのトラブルを防ぐために、薬剤師1人で訪問させないようにしている企業もあります。別のスタッフをドライバーとして同行させて、患者さまと1対1になる状況を避けるといった方法です。
また、「女性薬剤師は女性患者さまの訪問のみ」「男性薬剤師は男性患者さまの訪問のみ」と、同性の患者さまにだけサービスを提供するよう配慮している企業もあります。転職の面接時には、企業が防犯に関してどのような対策を講じているかを確認しておくことをおすすめします。
8. 在宅医療薬剤師の求人例
在宅医療の薬剤師としてどのように働けるかを知るには、実際の求人を見ると参考になります。ここでは、以下2つの求人例を紹介します。
- 調剤薬局の在宅医療薬剤師の求人例
- 内科メインの在宅医療薬剤師の求人例
8-1. 調剤薬局の在宅医療薬剤師の求人例
勤務場所 | 東京都 |
---|---|
雇用形態 | 正社員 |
給与 |
年収 450万円~480万円 賞与年2回(計4カ月分) |
業務内容 |
総合・在宅医療 処方箋枚数:約100枚/日 |
調剤薬局での在宅医療薬剤師の求人例です。業務内容としては、調剤薬局での一般的な業務に加え、在宅医療にも携わることができ、多様な経験を積むチャンスがあります。給与面でも、年収450万円~480万円、賞与年2回(計4カ月分)が支給されるため、安定した収入が期待できるでしょ。
求められる人物像としては「周囲と協力して、何事にも柔軟に取り組んでいただける方」があげられています。コミュニケーション能力があり、チームで協力しながら業務に取り組むことができる方や、在宅医療分野でのスキルアップを目指す薬剤師に適している職場と言えるでしょう。
8-2. 内科メインの在宅医療薬剤師の求人例
勤務場所 | 東京都 |
---|---|
雇用形態 | 正社員 |
給与 |
年収 540万円~ 賞与年1回 |
業務内容 |
内科・総合・在宅 処方箋枚数:約30枚/日 |
この事例の薬局は、一日当たりの処方箋枚数が30枚以下で、業務量が少ないのが特徴です。また、無理な転勤や異動がなく残業もほとんどないため、安定して働ける職場と言えます。
なお、この職場では薬剤師資格と運転免許の資格保有が求められています。また、教育研修の制度があるため、スキルアップを目指す人に向いています。
在宅医療に特化し、安定した勤務環境で働きたい薬剤師、訪問医療に取り組みたい人に適している職場です。似たような職場を選べば、ワークライフバランスを保ちながら、在宅医療の専門スキルを深められるでしょう。
上記の他にもさまざまな求人があります。気になる方は以下よりご確認ください。
9. 在宅医療薬剤師への転職を成功させよう

在宅医療における薬剤師の役割は、患者さまの生活に密接に寄り添いながら、薬の管理や服薬指導をおこなうことです。在宅医療の需要が増加する中で、対応しうるスキルを持つ薬剤師の存在は欠かせません。
高齢化社会に対応するためには、これまでの経験を活かしつつ、在宅医療というフィールドで活躍することが求められます。在宅医療薬剤師への転職を考えている方は、ぜひ「アポプラス薬剤師」にお問い合わせください。専門のエージェントが、あなたに最適なキャリアの選択肢をご提案します。
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